ニューハーフな生活

フロイライン

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「コーヒー飲む?」

「あ、ありがとう」

「お砂糖とミルクは?」

「ううん、大丈夫」


ワタシは花岡にコーヒーを出し、お風呂が沸くまでの間、また話をした。


「えっとお布団が無いから、ワタシと一緒にベッドで寝てくれる?」

「いいよ、そんなの
私、このソファーで寝るから。」


「ダメダメ、ちょっとこっち来て」

ワタシは花岡を寝室に案内した。

「ホラ、ベッド大きいでしょ?
これなら二人で寝ても余裕だから。

それに襲ったりもしないから安心して。」


ワタシがそう言うと

「えーっ、襲ってくれないの?」

と、花岡は言って笑った。

再びリビングルームに戻り、二人でコーヒーを飲みながら話を続けた。


「でも、田舎に帰るっていっても、帰って何するの?」


「うーん
何も決めてないけど、こっちで色々あり過ぎて、もう疲れちゃったし、ここらが潮時かなって。

向こうで、バイトでもパートでもいいから働き口見つけて地道に暮らしてくわ。」


「そっか」


「西村はどうすんの

ずっとニューハーフで生きてくの?」


「最初は短期のアルバイトにしておこうと思ってたんだ。

でも、なんか楽しくてっていうか、ニューハーフの世界がすごく自分に合ってるような気がしてハマっていっちゃった。」


「そうなんだ」


「で、もうタマも取っちゃったし、二年近く女性ホルモンの注射も続けてるか。男に戻る事ももうできないのよ。」


「タマ?
タマって、タマ?」


「うん。タマタマ」

「えーっ、すごい」

「すごくないって。」

「ちょっと見せてよ」

「ヤダよ」


そんなやり取りをしていると、お風呂が沸いた事を知らせる音楽が鳴った。


「沸いたよ。

花岡、先に入りなよ。」


「いいよ、私、無理言って泊めてもらってる身だし、後でいいから。」

そう言う花岡を説得して、先にお風呂に入ってもらった。


花岡は申し訳なさげに、ワタシに礼を言い、ボストンバックの中から、化粧落としとかシャンプーとかを取り出した。


「洗面所にワタシのが置いてあるから、良かったら使ってね。」


「ありがとう

西村も今は女の子だから、こういうのは持ってるんだよね。てか、私のより高級なやつを

目の前にしてても、ついつい男の子だった時の心象で西村と話をしてる自分がいる。」


「だよね。
ワタシも男として暮らしてきた時期の方がはるかに長いし、昔を知る人と会えば尚更だよ」

花岡は笑って浴室に行った。


部屋に自分以外の誰かがいる状態って…

なんて楽しいんだろう。
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