ニューハーフな生活

吉日

思い立ったら後先考えずに突っ走るのがワタシの良いところであり、悪いところである。

ユウさんに去勢手術の話をした翌日に山下美容外科に行き、手術の予約をし、三日後には手術台に寝ていた。


下半身をモロ出しして仰向けに寝ているこの姿、マヌケな感じがする。

すぐに看護師さんが局所部分だけ開いた布みたいなのを被せてくれた。


「それじゃあ、麻酔をかけますからね。
少し痛いけど我慢して下さい。」


キタキタ…
先輩達が言っていたタマタマへの直接注射だよ。

飛び上がるくらい痛いって言ってた人もいたよなあ。

緊張の中、針がワタシのタマに刺さった。

「うぐっ…」

飛び上がるくらいではないけど、めちゃくちゃ痛い…


麻酔が効くのを待って、いよいよ手術へ


ああ、緊張する。


袋が開かれてる

ちょっと焦げたような匂いがするから、レーザーメスを使ってるのかな？

これまで何人ものニューハーフのタマを抜いて来ただけあって、山下先生の手際は良い。



そして、いよいよ二十年間お世話になったワタシの睾丸が摘出される瞬間となった。


「最終確認です。

もう後戻りは出来ないですけど、本当にホーデンの摘出をしますか？」

この段階で、最終の意思確認をするのも山下先生流らしい。


「はい。大丈夫です。
取っちゃって下さい。」

ワタシがそう告げると、山下先生は頷いた。

ワタシの緊張は極度に達した。

何故か死んだ父、お母さん、妹の顔が脳裏をよぎった。


「大丈夫よ。」

そのとき、付いてくれてた看護師さんがワタシの手を握って励ましてくれた。

お母さんと同年代くらいの人だったので、なんかすごく感傷的な気分になっちゃって、ワタシはその手を握り返して思わずポロポロと涙を流してしまった。



引っ張られるような感覚
なんか内臓を引っ張り出されてるような感覚になった。

ついにタマが抜かれてるんだ。

摘出が終わると、神経？みたいなものを縫合して、全てが終了した。



「持って帰りますか？」

山下先生はホルマリン漬けにしたワタシのタマタマを顔の前に持って来て言った。

あっ、タマって丸くないんだ

焼肉のホルモンみたいだなあ

「いえ、大丈夫です。
処分して下さい。」

中には持って帰りたいって言う人もいるらしいから、この質問も必ずするんだって。


術後、しばらく休ませてもらい、家に帰ってからのすごし方、注意事項などの説明を受けて病院を出た。



鈍痛がするし、何か歩きにくい
バランスを欠いたこの感じ…
タマ抜いただけで真っ直ぐ歩けてないような気さえする。

それでも、なんとか家に着いたワタシは、
自分のベッドにゆっくりと入り、横になった。

一週間はお風呂に入っちゃいけないから、不潔ニューハーフになる。
とりあえず、お店も休ませてもらって回復に努めます。