泥々の川

フロイライン

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久美子が帰宅すると、夜遅くにもかかわらず、誠が起きて待っていた。


「お帰り」

「お父さん、まだ起きてたん?
寝といてって言うたやん」


「いや、寝られへんかっただけや。

それより、恵理子は元気にしとったか?」


「うん。
元気やったよ。
上の女の子が来年高校生になるねんて。」


「そうか。

元気やったら、それでええ。」


「…

お父さん、一人で寂しくない?」


「いや…
全部、自分のせいでこうなったわけやから、寂しいとかそういうのはないわ。

それに、俺にはお前がおる。

それだけで十分や。」


「うん。
ワタシはずっとお父さんの味方やからね。」


「いやいや、別にそういう意味で言うたんとちゃうねん。

離れてても、お前がどこかで元気で暮らしてくれてるんやったら、それでええんや。

恭子ちゃんの事は、気の毒で何て言うてええかわからんけど、お前だけはずっと幸せに生きて欲しい。

俺は最低の父親やったけど、お前のおかげで少しは人間らしく生きられるようになったから。」


「もう、今日はどないしたんよ。」


「まあ、そういう日もあるわ。

ところで、久美子
お前、恋人はおらんのか?」


「えっ」



「女と違うても、お前の事がええって言うてくれる男の一人や二人、おるんとちゃうんか?」


「お父さん…

言うてへんかってんけど、今、ワタシ
お付き合いさせてもろてる人がおるねん。」


「おう、そうなんか!

どんな人や?」


「それがちょっと言いにくいねんけど…
お父さんより年上で…
もうすぐ還暦の人やねん。」


「何やて、ホンマか?」


「うん…」


「でも、好きなんやろ?」


「うん。好き。」


「それやったらええやないか。

ワシも今度会うて挨拶せなあかんな。」


「ホンマ?
お父さんが会うてくれるんやったら、今度連れて来るから一度会うて。

ワタシのマネージャーやってくれてる人やし。

大阪で仕事ある時は、一々来てもらうのが申し訳ないから帯同はしてもろてへんねんけど、次のとき一緒に来てもらうわ。

梅田か難波で三人でご飯食べようよ。」


「おう、そやな。

背広あったかなあ。」


「そんなん着んでええよ。
普段着で全然かまへんねんから。」

久美子は、笑ってそう答えた。
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