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耐え難き日々
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恭子の母淑子と久美子は、地下鉄御堂筋線に乗り、江坂駅に向かっていた。
「それにしても、久美子ちゃんがあの友谷君と同一人物やったやねんて、ホンマにわからへんかったわ。」
「すみません。
言い出しにくくて。」
「いいのよ。
中学のとき、恭子があなたの事をよく話しててね。
いじめられてるところを助けてくれたって。
写真では見た事があったのよ。
あの時から綺麗な顔をしてると思ったけど、今のあなたは本当に美しいよね。
女の人でもこれほどの美人はなかなかいないもの。
テレビで人気なのがよくわかるわ。」
「いえ、全然そんな…」
「久美子ちゃんは、小さい時から女の子になりたかったの?」
「ワタシは、そういうわけじゃなくて…」
「あれ?
違うんだ」
「話せば長くなるんですけど…
別に女の子になりたいってわけじゃなくて、フツーの男の子だったんです。
今はこんな感じなんですけどね。」
「そうなのね。
恭子も酷い目に遭ったけど、久美子ちゃんも色々辛い事があって、今があるのね。」
「いえ、ワタシの場合は自分で納得した結果ですから。」
久美子がそう言うと、淑子は、それ以上は何も言わなかった。
地下鉄とバスを乗り継ぎ、大阪府吹田市にある病院にやってきた二人は、医師に連れられて厳重に鍵がかけられた部屋に入っていった。
「恭子さん、お母さんとお友達が来てくれましたよ。」
体に拘束具を付けられ、ベッドに寝かされているベッドに寝かされた恭子に男性医師が声をかけた。
しかし、恭子はやつれ果てた姿で覇気がなく、目だけを動かし、淑子と久美子の姿を見た。
「恭子、友谷さんが来てくれたわよ」
淑子が声をかけても、恭子は無反応でただ、見つめるだけだった。
久美子も声をかけたが、同じような反応をされ、沈黙されてしまった。
それからしばらく声をかけ続けた二人だったが、恭子が寝てしまったので、そっと部屋を出た。
「先生、恭子の様子はどうなんでしょうか。」
「お母さん、四年間もの間ずっと薬漬けにされていた事もあり、肉体、精神的全てにおいて、かなり厳しいものがあります。
耐え難い禁断症状が断続的に襲ってきますので、こうして薬を投与して眠ってもらっています。」
淑子の問いに、医師は苦しげな表情を浮かべて言った。
久美子達の活躍により、恭子はようやく解放され、自由の身となった。
しかし、もうどうしようもないくらいにボロボロになったその姿は、二人に希望ではなく、底知れぬ絶望感を与えるのみであった。
「それにしても、久美子ちゃんがあの友谷君と同一人物やったやねんて、ホンマにわからへんかったわ。」
「すみません。
言い出しにくくて。」
「いいのよ。
中学のとき、恭子があなたの事をよく話しててね。
いじめられてるところを助けてくれたって。
写真では見た事があったのよ。
あの時から綺麗な顔をしてると思ったけど、今のあなたは本当に美しいよね。
女の人でもこれほどの美人はなかなかいないもの。
テレビで人気なのがよくわかるわ。」
「いえ、全然そんな…」
「久美子ちゃんは、小さい時から女の子になりたかったの?」
「ワタシは、そういうわけじゃなくて…」
「あれ?
違うんだ」
「話せば長くなるんですけど…
別に女の子になりたいってわけじゃなくて、フツーの男の子だったんです。
今はこんな感じなんですけどね。」
「そうなのね。
恭子も酷い目に遭ったけど、久美子ちゃんも色々辛い事があって、今があるのね。」
「いえ、ワタシの場合は自分で納得した結果ですから。」
久美子がそう言うと、淑子は、それ以上は何も言わなかった。
地下鉄とバスを乗り継ぎ、大阪府吹田市にある病院にやってきた二人は、医師に連れられて厳重に鍵がかけられた部屋に入っていった。
「恭子さん、お母さんとお友達が来てくれましたよ。」
体に拘束具を付けられ、ベッドに寝かされているベッドに寝かされた恭子に男性医師が声をかけた。
しかし、恭子はやつれ果てた姿で覇気がなく、目だけを動かし、淑子と久美子の姿を見た。
「恭子、友谷さんが来てくれたわよ」
淑子が声をかけても、恭子は無反応でただ、見つめるだけだった。
久美子も声をかけたが、同じような反応をされ、沈黙されてしまった。
それからしばらく声をかけ続けた二人だったが、恭子が寝てしまったので、そっと部屋を出た。
「先生、恭子の様子はどうなんでしょうか。」
「お母さん、四年間もの間ずっと薬漬けにされていた事もあり、肉体、精神的全てにおいて、かなり厳しいものがあります。
耐え難い禁断症状が断続的に襲ってきますので、こうして薬を投与して眠ってもらっています。」
淑子の問いに、医師は苦しげな表情を浮かべて言った。
久美子達の活躍により、恭子はようやく解放され、自由の身となった。
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