242 / 264
寸暇
しおりを挟む
「警察の者です。」
柳原は、女主人に対し、警察手帳を出した。
「ちょっと、なんなんですか?
騒がしいと思ったら、人の店の前で!」
「騒がしいヤクザを店に入れたのはあなたでしょう?」
「だから、一体何の用?
早く帰って!」
「春蘭さん。
アンタ等が違法な売春を繰り返しているのは調べがついてんだよ。
今までは黙認という形を取っていたが、今年風営法が改正されたのは知っているな?
これ以上抵抗すると、警察に同行してもらう事になるが、かまわないんだな?」
柳原の言葉に、女主人の元気が一気になくなってしまった。
「…で、どうすればいいのさ?」
「ここに連れてくるんだ。
佐野恭子さんを。」
「誰よ?それ
知らないわ、そんなの」
「昨日、僕に付けてくれた優子って子だよ。
足が悪くて、少し引きずって歩く…
あなたが良い子がいるって当てがった女の子だよ!
知らないとは言わせないぞ。」
すかさず、江藤が口を挟んだ。
「…わかったよ、ちょっと待ってな。」
女主人は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、奥へと消えていった。
四人が固唾を呑んで見守る中、女主人が手を引いて連れてきたのは…
「恭子!」
久美子は、思わず叫び、駆け寄った。
顔を変えられ、長年の覚醒剤漬けで、見た目こそ思いっきり変わってしまったが、その歩き方、雰囲気は、まさしく佐野恭子本人であった。
だが、恭子は、久美子を見ても反応がなく、興味なさげに、ボーッとするのみであった。
「この人は、或る男に拉致されて薬物を大量投与された挙げ句、ヤクザによってここに売り飛ばされたんだ。
その経緯はアンタも当然知っていると思うが。
とにかく、警察で直ちに保護する。」
柳原は、女主人に強い口調で言うと、恭子の肩を抱きかかえるようにして、女主人から引き剥がした。
勿論、新宿龍神会と一連托生の「春蘭」が事情を知らないわけはなく、女主人は、さしたる抵抗もせず、恭子を素直に引き渡した。
江藤は、警察によって恭子が保護された事にホッとし、久美子からの依頼において、その責務を果たせたと、満足そうに頷いた。
「刑事さん、本当に助かりました。
いつ龍神会の奴らが戻ってくるかわかりませんので、一旦警察の方へ行きましょう。」
ジローが柳原に声をかけると
「すいません、それはちょっと出来ません。
とりあえずここを出て、場所を変えましょう。」
「出来ない?
警察で保護してくれないのか!」
ジローが少し声を荒げて言うと、久美子と江藤も、柳原に視線を向けた。
柳原は、申し訳なさそうな表情をしたが、同時に周りを警戒した。
柳原は、女主人に対し、警察手帳を出した。
「ちょっと、なんなんですか?
騒がしいと思ったら、人の店の前で!」
「騒がしいヤクザを店に入れたのはあなたでしょう?」
「だから、一体何の用?
早く帰って!」
「春蘭さん。
アンタ等が違法な売春を繰り返しているのは調べがついてんだよ。
今までは黙認という形を取っていたが、今年風営法が改正されたのは知っているな?
これ以上抵抗すると、警察に同行してもらう事になるが、かまわないんだな?」
柳原の言葉に、女主人の元気が一気になくなってしまった。
「…で、どうすればいいのさ?」
「ここに連れてくるんだ。
佐野恭子さんを。」
「誰よ?それ
知らないわ、そんなの」
「昨日、僕に付けてくれた優子って子だよ。
足が悪くて、少し引きずって歩く…
あなたが良い子がいるって当てがった女の子だよ!
知らないとは言わせないぞ。」
すかさず、江藤が口を挟んだ。
「…わかったよ、ちょっと待ってな。」
女主人は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、奥へと消えていった。
四人が固唾を呑んで見守る中、女主人が手を引いて連れてきたのは…
「恭子!」
久美子は、思わず叫び、駆け寄った。
顔を変えられ、長年の覚醒剤漬けで、見た目こそ思いっきり変わってしまったが、その歩き方、雰囲気は、まさしく佐野恭子本人であった。
だが、恭子は、久美子を見ても反応がなく、興味なさげに、ボーッとするのみであった。
「この人は、或る男に拉致されて薬物を大量投与された挙げ句、ヤクザによってここに売り飛ばされたんだ。
その経緯はアンタも当然知っていると思うが。
とにかく、警察で直ちに保護する。」
柳原は、女主人に強い口調で言うと、恭子の肩を抱きかかえるようにして、女主人から引き剥がした。
勿論、新宿龍神会と一連托生の「春蘭」が事情を知らないわけはなく、女主人は、さしたる抵抗もせず、恭子を素直に引き渡した。
江藤は、警察によって恭子が保護された事にホッとし、久美子からの依頼において、その責務を果たせたと、満足そうに頷いた。
「刑事さん、本当に助かりました。
いつ龍神会の奴らが戻ってくるかわかりませんので、一旦警察の方へ行きましょう。」
ジローが柳原に声をかけると
「すいません、それはちょっと出来ません。
とりあえずここを出て、場所を変えましょう。」
「出来ない?
警察で保護してくれないのか!」
ジローが少し声を荒げて言うと、久美子と江藤も、柳原に視線を向けた。
柳原は、申し訳なさそうな表情をしたが、同時に周りを警戒した。
1
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる