泥々の川

フロイライン

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「警察の者です。」

柳原は、女主人に対し、警察手帳を出した。


「ちょっと、なんなんですか?
騒がしいと思ったら、人の店の前で!」


「騒がしいヤクザを店に入れたのはあなたでしょう?」


「だから、一体何の用?
早く帰って!」


「春蘭さん。
アンタ等が違法な売春を繰り返しているのは調べがついてんだよ。

今までは黙認という形を取っていたが、今年風営法が改正されたのは知っているな?

これ以上抵抗すると、警察に同行してもらう事になるが、かまわないんだな?」

柳原の言葉に、女主人の元気が一気になくなってしまった。


「…で、どうすればいいのさ?」


「ここに連れてくるんだ。

佐野恭子さんを。」


「誰よ?それ

知らないわ、そんなの」


「昨日、僕に付けてくれた優子って子だよ。
足が悪くて、少し引きずって歩く…
あなたが良い子がいるって当てがった女の子だよ!

知らないとは言わせないぞ。」

すかさず、江藤が口を挟んだ。


「…わかったよ、ちょっと待ってな。」


女主人は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、奥へと消えていった。

四人が固唾を呑んで見守る中、女主人が手を引いて連れてきたのは…




「恭子!」

久美子は、思わず叫び、駆け寄った。

顔を変えられ、長年の覚醒剤漬けで、見た目こそ思いっきり変わってしまったが、その歩き方、雰囲気は、まさしく佐野恭子本人であった。


だが、恭子は、久美子を見ても反応がなく、興味なさげに、ボーッとするのみであった。


「この人は、或る男に拉致されて薬物を大量投与された挙げ句、ヤクザによってここに売り飛ばされたんだ。

その経緯はアンタも当然知っていると思うが。

とにかく、警察で直ちに保護する。」

柳原は、女主人に強い口調で言うと、恭子の肩を抱きかかえるようにして、女主人から引き剥がした。

勿論、新宿龍神会と一連托生の「春蘭」が事情を知らないわけはなく、女主人は、さしたる抵抗もせず、恭子を素直に引き渡した。


江藤は、警察によって恭子が保護された事にホッとし、久美子からの依頼において、その責務を果たせたと、満足そうに頷いた。


「刑事さん、本当に助かりました。
いつ龍神会の奴らが戻ってくるかわかりませんので、一旦警察の方へ行きましょう。」


ジローが柳原に声をかけると

「すいません、それはちょっと出来ません。

とりあえずここを出て、場所を変えましょう。」


「出来ない?


警察で保護してくれないのか!」


ジローが少し声を荒げて言うと、久美子と江藤も、柳原に視線を向けた。


柳原は、申し訳なさそうな表情をしたが、同時に周りを警戒した。
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