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潮流
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その日、久美子は、失踪した恭子の事を答えるインタビューシーンを別撮りで収録するために、ジローと共にスタジオを訪れていた。
収録まで、まだ時間があるということで、楽屋でジローと談笑していると、徐に部屋がノックされた。
「はーい」
と、返事をすると、ドアが開き、一人の中年男性が入ってきた。
久美子もジローも、思わず声を上げた。
その男を二人共知っていたからだった。
「立川さん!」
訪ねてきたのは、この番組のではないが、プロデューサーの立川誠だった。
「お久しぶりですね、お二人とも。
お元気にされてましたか」
立川はニコニコしながら二人のところに来た。
「俺は元気だよ、元気すぎるくらいにな。
まあ、引退してるようなもんだから、毎日ヒマにはしてるけどな。」
ジローが少しイヤミっぽく言ったのに対し
「ワタシも元気にしてます。」
久美子はフツーに答えた。
「それは、何よりです。」
「立っちゃんこそ元気そうじゃねえか。」
「はい。
春からの昼の帯番組がおかげさまで好調で、忙しくさせてもらってます。」
「あれ、立っちゃんの番組だったかあ。
面白いよなあ、あの司会の芸人、よく見つけたな。」
「まあ、スギヤマさんは芸達者ですし、ゲストの話をちゃんと聞ける人ですからね。
すごく助かってます。」
「そうだな。
久美子の前で言うのもあれだけど、関西芸人をブッキングしてたら、すぐに終わってたかもな。
我が強くて、ゲストより自分の話ばっかりして、視聴者が付いてこなくなる。」
「さすがジローさん。
テレビの事をよくわかってらっしゃる。」
「まあ、キャリアだけは長いからな。
ところで、今日はどうしたんだ?
この番組を担当してねえだろ。」
「ええ。
実は、私がやっているその番組なんですけどねえ。
是非、久美子さんに出演してもらえないかなって。」
「えっ?」
久美子が驚くと、立川は話を続けた。
「番組内で先月から始めたコーナーで、Mr.レディーを扱うのがあるんですけど、それが大好評で。
そのコーナーにレギュラーとして久美子さんに出てもらえないかと思いまして。」
「えっ、ワタシがですか?
ワタシもあのコーナーを見させてもらってますけど、全国の美人ニューハーフさんが出てきて…ってやつですよね?」
「そうですそうです。
コーナーから若いニューハーフのスターも誕生したんですけど。
僕の中で史上最も美しいニューハーフは、友谷久美子さんと松永友美子さんなんです。
松永さんも久美子さんも引退しちゃってて、残念に思ってたところ、久美子さん局に来てるっていうじゃありませんか。
そりゃ、訪ねるしかないと思いましてね。」
立川は少し高揚して二人に言った。
収録まで、まだ時間があるということで、楽屋でジローと談笑していると、徐に部屋がノックされた。
「はーい」
と、返事をすると、ドアが開き、一人の中年男性が入ってきた。
久美子もジローも、思わず声を上げた。
その男を二人共知っていたからだった。
「立川さん!」
訪ねてきたのは、この番組のではないが、プロデューサーの立川誠だった。
「お久しぶりですね、お二人とも。
お元気にされてましたか」
立川はニコニコしながら二人のところに来た。
「俺は元気だよ、元気すぎるくらいにな。
まあ、引退してるようなもんだから、毎日ヒマにはしてるけどな。」
ジローが少しイヤミっぽく言ったのに対し
「ワタシも元気にしてます。」
久美子はフツーに答えた。
「それは、何よりです。」
「立っちゃんこそ元気そうじゃねえか。」
「はい。
春からの昼の帯番組がおかげさまで好調で、忙しくさせてもらってます。」
「あれ、立っちゃんの番組だったかあ。
面白いよなあ、あの司会の芸人、よく見つけたな。」
「まあ、スギヤマさんは芸達者ですし、ゲストの話をちゃんと聞ける人ですからね。
すごく助かってます。」
「そうだな。
久美子の前で言うのもあれだけど、関西芸人をブッキングしてたら、すぐに終わってたかもな。
我が強くて、ゲストより自分の話ばっかりして、視聴者が付いてこなくなる。」
「さすがジローさん。
テレビの事をよくわかってらっしゃる。」
「まあ、キャリアだけは長いからな。
ところで、今日はどうしたんだ?
この番組を担当してねえだろ。」
「ええ。
実は、私がやっているその番組なんですけどねえ。
是非、久美子さんに出演してもらえないかなって。」
「えっ?」
久美子が驚くと、立川は話を続けた。
「番組内で先月から始めたコーナーで、Mr.レディーを扱うのがあるんですけど、それが大好評で。
そのコーナーにレギュラーとして久美子さんに出てもらえないかと思いまして。」
「えっ、ワタシがですか?
ワタシもあのコーナーを見させてもらってますけど、全国の美人ニューハーフさんが出てきて…ってやつですよね?」
「そうですそうです。
コーナーから若いニューハーフのスターも誕生したんですけど。
僕の中で史上最も美しいニューハーフは、友谷久美子さんと松永友美子さんなんです。
松永さんも久美子さんも引退しちゃってて、残念に思ってたところ、久美子さん局に来てるっていうじゃありませんか。
そりゃ、訪ねるしかないと思いましてね。」
立川は少し高揚して二人に言った。
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