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「八尾さんのおっしゃった通り、今度の生放送で、一般からの情報提供がどれくらいあるか…」
久美子は、ジローとスタジオを出て歩きながら呟くように言った。
「そうだな。
だけど、テレビの力は絶大だよ。今の世の中、テレビを上回る媒体なんて存在しない。
俺も期待できると思う。」
ジローは、久美子を励ますように言い、その肩に手を置いた。
「ジローちゃん、ほんまにありがとう。
ジローちゃんがおれへんかったら、ここまで辿り着く事ができへんかったわ。」
「アホ、礼なんか言われる筋合いなんかないで。
俺がやりたくてやってるねん。」
「何よ、そのヘタな関西弁は。
ひょっとしてバカにしてる?」
「してへんしてへん」
ジローは楽しそうに笑って言った。
「江藤さんの方は進展してるんやろか…」
久美子は別行動で調査をする江藤の進捗具合を気にしていた。
江藤は、その日の晩も例のバーに行き、カウンターで、バーテンダーの後藤と話をしていた。
「この店気に入っちゃって、今週はこれで3回目だよね。」
「ありがとうございます。
気に入っていただける要素はそんなにないと思うんですけどね。」
後藤は自嘲気味に言って笑った。
「いや、雰囲気がいいよ。
最近、こうやって落ち着いて飲める店ってのが少なくなったよね。
特に新宿では。」
「まあ、この辺も若者の街に様変わりしましたのでね。
ワイワイ騒げる居酒屋なんかが人気ですよ。」
「アレは俺らみたいな年齢の人間からすると、どうもいただけないなあ。
店入って、横に大学生の集団なんかがいた日にゃあ、目も当てられない。」
「たしかに」
後藤が笑うと、江藤もタバコを吸いながら口元を緩めた。
そのとき、店のドアが開く音がして、客が入ってきた。
江藤は、タバコを灰皿に置き、横目で入口の方を見て、心の中で
(ビンゴ)
と、呟くように言った。
入ってきたのは、先日カップルで来ていた、コウちゃんと呼ばれていた男の方だった。
女は今日はいない。
やはり、ここで新宿龍神会の梁川と会う約束をしているのだ。
江藤はこの状況に、高揚しながらも、少し緊張気味にその時を待った。
ヤクザと二十代の若いサラリーマン
この二人がなぜ結びついているか…
その理由を考えながら…
久美子は、ジローとスタジオを出て歩きながら呟くように言った。
「そうだな。
だけど、テレビの力は絶大だよ。今の世の中、テレビを上回る媒体なんて存在しない。
俺も期待できると思う。」
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「ジローちゃん、ほんまにありがとう。
ジローちゃんがおれへんかったら、ここまで辿り着く事ができへんかったわ。」
「アホ、礼なんか言われる筋合いなんかないで。
俺がやりたくてやってるねん。」
「何よ、そのヘタな関西弁は。
ひょっとしてバカにしてる?」
「してへんしてへん」
ジローは楽しそうに笑って言った。
「江藤さんの方は進展してるんやろか…」
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江藤は、その日の晩も例のバーに行き、カウンターで、バーテンダーの後藤と話をしていた。
「この店気に入っちゃって、今週はこれで3回目だよね。」
「ありがとうございます。
気に入っていただける要素はそんなにないと思うんですけどね。」
後藤は自嘲気味に言って笑った。
「いや、雰囲気がいいよ。
最近、こうやって落ち着いて飲める店ってのが少なくなったよね。
特に新宿では。」
「まあ、この辺も若者の街に様変わりしましたのでね。
ワイワイ騒げる居酒屋なんかが人気ですよ。」
「アレは俺らみたいな年齢の人間からすると、どうもいただけないなあ。
店入って、横に大学生の集団なんかがいた日にゃあ、目も当てられない。」
「たしかに」
後藤が笑うと、江藤もタバコを吸いながら口元を緩めた。
そのとき、店のドアが開く音がして、客が入ってきた。
江藤は、タバコを灰皿に置き、横目で入口の方を見て、心の中で
(ビンゴ)
と、呟くように言った。
入ってきたのは、先日カップルで来ていた、コウちゃんと呼ばれていた男の方だった。
女は今日はいない。
やはり、ここで新宿龍神会の梁川と会う約束をしているのだ。
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