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правда真相
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「あなたのお友達は暗い闇の中でもがき苦しんでいます。」
ニーナは恭子の顔写真を机に置き、その上に手を当てて目を瞑っていたが、しばらくすると目を開き、そのように言った。
久美子は、驚きのあまり、通訳にその言葉の意味を聞いた。
それは、あの世という暗い闇の中でもがき苦しんでいるのか、それとも、生きていて、文字通り暗いところにいるのかを。
ニーナは通訳から久美子の質問を聞き取ると、早口のロシア語で通訳に間髪入れずに話した。
「生きています。
私はリアリストです。死んでしまった状態に対し、そのような形容はしません。」
「では、恭子は生きているんですね!」
実際のところ久美子も半分くらいは諦めていた。
失踪してから四年が経過し、その間、何の手掛かりもなかったのだ。生きている自体おかしな事だともいえたから。
しかし、東京で失踪したという情報がなく、大阪だけを捜査したという初動も間違っていた。
だからこそ、一縷の望みをかけて上京したのだ。
それでも、このような答えがニーナの口から出るとは思ってもみなかった。
「キョーコさんは、たしかに生きています。
しかし、驚くほど衰弱しており、健康状態はよくないようです。」
「恭子はどこにいるんでしょうか?」
「人の行き来が多い街
大きな煙突があり、近くに線路があります。
貨物列車が通っています。
キョーコさんは、その近くにある家の地下におり、苦しそうにしています。」
ニーナは自分が見たビジョンを久美子に伝えた。
久美子はそれらの事を慌ててメモに取り、さらに詳しく聞き出そうとしたが、そこまでだった。
そして、そこで時間となり、ニーナに礼を言うと、久美子は部屋を出た。
続いて、久美子は別撮りで司会者からの質問に答えるところを収録し、最後に一般視聴者からの情報提供をお願いした。
「はい、オッケーです!」
ディレクターからカットがかかり、久美子の出演する場面は全て撮り終えた。
カメラの向こうでその様子を見つめていたジローは、久美子に近づき、声をかけた。
「お疲れさん。
よく頑張った。」
「うん。
ニーナさんに生きてるって言ってもらえて、希望が湧いてきたわ。」
「そうだな。
少しずつだけど近づいてきてる気がするよ。」
二人のところに、八尾も来て、今回出演してくれた事に対する謝意を示した。
「久美子さん、ありがとうございました。
今回収録した模様は、当日の生放送の中で流します。
流し終わった後、生放送のスタジオに切り替わり、司会から一般視聴者へ情報提供を呼びかけて電話番号を出し、そこにかけてもらおうっていうやり方です。」
「情報提供があればいいんですけど。」
「電話三十台で対応します。
イタズラもありますが、これがきっかけで解決した事件は何件もあります。
期待は出来ると思いますよ。」
八尾の力強い言葉に、二人は縋るような気持ちで頷いた。
ニーナは恭子の顔写真を机に置き、その上に手を当てて目を瞑っていたが、しばらくすると目を開き、そのように言った。
久美子は、驚きのあまり、通訳にその言葉の意味を聞いた。
それは、あの世という暗い闇の中でもがき苦しんでいるのか、それとも、生きていて、文字通り暗いところにいるのかを。
ニーナは通訳から久美子の質問を聞き取ると、早口のロシア語で通訳に間髪入れずに話した。
「生きています。
私はリアリストです。死んでしまった状態に対し、そのような形容はしません。」
「では、恭子は生きているんですね!」
実際のところ久美子も半分くらいは諦めていた。
失踪してから四年が経過し、その間、何の手掛かりもなかったのだ。生きている自体おかしな事だともいえたから。
しかし、東京で失踪したという情報がなく、大阪だけを捜査したという初動も間違っていた。
だからこそ、一縷の望みをかけて上京したのだ。
それでも、このような答えがニーナの口から出るとは思ってもみなかった。
「キョーコさんは、たしかに生きています。
しかし、驚くほど衰弱しており、健康状態はよくないようです。」
「恭子はどこにいるんでしょうか?」
「人の行き来が多い街
大きな煙突があり、近くに線路があります。
貨物列車が通っています。
キョーコさんは、その近くにある家の地下におり、苦しそうにしています。」
ニーナは自分が見たビジョンを久美子に伝えた。
久美子はそれらの事を慌ててメモに取り、さらに詳しく聞き出そうとしたが、そこまでだった。
そして、そこで時間となり、ニーナに礼を言うと、久美子は部屋を出た。
続いて、久美子は別撮りで司会者からの質問に答えるところを収録し、最後に一般視聴者からの情報提供をお願いした。
「はい、オッケーです!」
ディレクターからカットがかかり、久美子の出演する場面は全て撮り終えた。
カメラの向こうでその様子を見つめていたジローは、久美子に近づき、声をかけた。
「お疲れさん。
よく頑張った。」
「うん。
ニーナさんに生きてるって言ってもらえて、希望が湧いてきたわ。」
「そうだな。
少しずつだけど近づいてきてる気がするよ。」
二人のところに、八尾も来て、今回出演してくれた事に対する謝意を示した。
「久美子さん、ありがとうございました。
今回収録した模様は、当日の生放送の中で流します。
流し終わった後、生放送のスタジオに切り替わり、司会から一般視聴者へ情報提供を呼びかけて電話番号を出し、そこにかけてもらおうっていうやり方です。」
「情報提供があればいいんですけど。」
「電話三十台で対応します。
イタズラもありますが、これがきっかけで解決した事件は何件もあります。
期待は出来ると思いますよ。」
八尾の力強い言葉に、二人は縋るような気持ちで頷いた。
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