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勘
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江藤は帰るのをやめ、もうしばらく店にいる事にした。
何故なら、この若い男の口から「梁川」という固有名詞が出たからである。
梁川…
新宿龍神会の幹部の梁川竜司ではないかと思ったからである。
彼らの縄張りで、ここに出入りもしているという…
まさに江藤が接触したいと思っていた男の事ではないのか…
いや、間違いない…
江藤は、とりあえず知らぬ顔をして二人の会話に聞き耳を立てる事にした。
しかし、女がトイレから戻ってくると、コウちゃんと呼ばれていた男は、話すのをやめてしまった。
このカップルは、同じ会社にいるらしく、会話は専ら社内で起きたどうって事のない話しばかりであった。
「それでさあ、滝澤さんになんて言われたと思う?
アンタ、可愛いしか取り柄のないバカなんだからあんまり外部の人と喋らないでって。」
「フフッ
まあ、それしか取り柄がないって事はないけど、しーちゃんは可愛いから、他の人たちに嫉妬されてんだよ。」
江藤は、これ以上有益な話は聞けないと判断し、頃合いを見て帰ろうとしていた。
新宿龍神会の梁川という名前が聞けただけでも収穫だと思いながら…
「ねえ、コウちゃん
例の件、どうなった?」
「例の件?」
「そう、スタジオ観覧の件よ。」
「あー、その件ね。
マジで言ってたんだ?」
「当たり前じゃない。
私、水曜レギュラーの岬賢司の大ファンなのよ。」
「言ってたね。
でも、何とかなるかなあ」
「出来るわよ。
コウちゃんのお父様の会社が大スポンサーなんでしょ?」
「んー、そうだね。
あの時間帯は昔から親父の会社の一社提供でやってきたから。」
「だったら大丈夫じゃん。」
「うん。
帰ったら聞いてみるよ。」
江藤はまた席を立つタイミングを失い、二人の会話に聞き入った。
この店は使える。
ここで張れば、謎が解けるかもしれない。
江藤は、この店にヒントが隠されているに違いないと、探偵としての直感がはたらいたのだった。
何故なら、この若い男の口から「梁川」という固有名詞が出たからである。
梁川…
新宿龍神会の幹部の梁川竜司ではないかと思ったからである。
彼らの縄張りで、ここに出入りもしているという…
まさに江藤が接触したいと思っていた男の事ではないのか…
いや、間違いない…
江藤は、とりあえず知らぬ顔をして二人の会話に聞き耳を立てる事にした。
しかし、女がトイレから戻ってくると、コウちゃんと呼ばれていた男は、話すのをやめてしまった。
このカップルは、同じ会社にいるらしく、会話は専ら社内で起きたどうって事のない話しばかりであった。
「それでさあ、滝澤さんになんて言われたと思う?
アンタ、可愛いしか取り柄のないバカなんだからあんまり外部の人と喋らないでって。」
「フフッ
まあ、それしか取り柄がないって事はないけど、しーちゃんは可愛いから、他の人たちに嫉妬されてんだよ。」
江藤は、これ以上有益な話は聞けないと判断し、頃合いを見て帰ろうとしていた。
新宿龍神会の梁川という名前が聞けただけでも収穫だと思いながら…
「ねえ、コウちゃん
例の件、どうなった?」
「例の件?」
「そう、スタジオ観覧の件よ。」
「あー、その件ね。
マジで言ってたんだ?」
「当たり前じゃない。
私、水曜レギュラーの岬賢司の大ファンなのよ。」
「言ってたね。
でも、何とかなるかなあ」
「出来るわよ。
コウちゃんのお父様の会社が大スポンサーなんでしょ?」
「んー、そうだね。
あの時間帯は昔から親父の会社の一社提供でやってきたから。」
「だったら大丈夫じゃん。」
「うん。
帰ったら聞いてみるよ。」
江藤はまた席を立つタイミングを失い、二人の会話に聞き入った。
この店は使える。
ここで張れば、謎が解けるかもしれない。
江藤は、この店にヒントが隠されているに違いないと、探偵としての直感がはたらいたのだった。
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