泥々の川

フロイライン

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Iturn

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いつものように帰宅してきた誠に、久美子は手料理を振る舞っていたが…


「お父さん」


「うん?」


「申し訳ないねんけど、ワタシ
しばらく東京に行こうと思てんねん」


「東京?

またどないしたんや、急に」


「うん。

色々調べてみたら、恭子はワタシに会うために東京に向かって、そのまま行方不明になったんよ。」


「えっ

ホンマか?」


「うん。間違いないと思う。

この件は、ワタシに責任のほとんどがあると思うし、どんな事でもええから手掛かりを掴みたいと思てる。」


「そうか。

お前がそう思うんやったら、俺が止める権利はあらへん。

でもな、自分の責任やとか、そういう考え方はしたらあかん。

あのお嬢さんも四年前言うたら、立派な大人やったんや。
お前の預かり知らんところで何があっても、それは自己責任やし、一々責任感じててもしゃあないぞ。」


「うん。ありがとう、お父さん。

でも、ワタシに会いに来ようとして何かあったんは間違いないし、とにかくワタシにやれるだけの事はしたいから。」


「わかった。

せやけど、危険な事には首突っ込んだらあかんぞ。

お前に何かあったらワシは死んでも死にきれん。」


「大丈夫やて。
ワタシ、臆病やし、非力やからそんな事にはならへんし。」


久美子は笑って言ったが…


誠の心配する通り、危険な空気を感じないでもなかった。

だが、少しでも可能性があるのなら、何とかしたい
彼女を突き動かすのは、その一心以外何もなかった。


翌日、ボストンバックを抱え、久美子は自宅を後にした。

そして、新大阪に向かう前に、恭子の実家を再び訪ねた。



「えっ、東京へ?」


「はい。
多分、東京に行けば何か手掛かりが掴めるかもしれません」


「でも、友谷さんにそんな事まで…」


「恭子さんは、ワタシの大切な…友人だったんです。

自分に出来る限りのことはしたいんです。」


「昨日、私は警察に相談に行ったんです。
娘が東京に行って、何かの事件に巻き込まれて失踪した可能性があるっていう話をしに。

でも、警察の人はめんどくさそうに、事務的に対応するだけで、まともに取り合ってくれませんでした。」


「四年が経過していますし、警察がそのような対応をすることは仕方ない部分もあるでしょう。

だからこそ、自分の足で手掛かりを探さなければならないと思っています。」


「友谷さん。
お金はお支払いしますので、どうかよろしくお願いします。」


「いえ、東京には知り合いもいますし、そこに泊めてもらいながら行動しますので大丈夫ですよ。
あと、できるだけ多く、恭子さんの写真をお借り出来ますか。」

久美子は淑子から恭子の写真を何枚か貸してもらい、家を後にした。

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