泥々の川

樹陽介

樹 陽介（本名同じ）は、昭和32年5月20日生まれで、今年二十六になった。

芸能界デビューのきっかけは、新潟の地元テレビ局主催のこどものど自慢大会に出て、優勝は出来なかったが、ルックスが飛び抜けて良かった事が、男性アイドル専門のメニーズ事務所の目に留まった事によるものだった。

陽介は中学を卒業すると、親元を離れ、メニーズ事務所の合宿所に入所し、そこから東京の私立高校に通う事となった。


陽介は、新人にもかかわらず、一人部屋を与えられていた。
本人は期待の表れとして大喜びだったが、同時に、周りの嫉妬を呼ぶのではないかと、内心不安にも思っていた。

しかし、そんな陽介の事を、合宿所の面々は気の毒そうに見つめるだけであった。

陽介は、それが何を意味しているのか、さっぱりわからなかったが、入所後一週間にして、その意味を知る事となった。


その日も、陽介は学校が終わると、ダンスと歌のレッスンを受け、合宿所に帰ってきた。

食堂で皆とご飯を食べ、お風呂に入り、就寝のためベッドに入った。

一日中忙しくしていたので、クタクタに疲れていた陽介は、すぐに熟睡モードとなっていたが、程なくして目を覚ました。
何故なら、人の気配を感じたからだった。

陽介は、何気なしに片目を開けると、そこにはメニー喜多村が添い寝をする形で、自分をジッと見つめていた。

「えっ…」

陽介は思わず声を上げそうになったが、喜多村は
、指を口に当て、静かにするようにとのジェスチャーをした。

そこから、喜多村によって自分が何をされたのか

あまりの衝撃に、陽介は自らの記憶に封印をして、何もなかったと暗示をかけ、朝を迎えた。


しかし、陽介を気に入ってしまった喜多村は、毎夜毎夜、陽介のベッドに入り込んできて、陽介の体を凌辱し、執拗なまでに口淫を求めた。

「お父さんやお母さんに大スターになるって言って東京に出てきたんだろ？

これを乗り越えないと、キミはスターにはなれないよ。
逆に乗り越える事が出来れば、ボクが必ずキミをスターにしてみせるから。」


喜多村は真顔でそう言った。

毎夜喜多村に迫られた陽介は、既に心が壊れ、感覚が麻痺していたが、この行為だけは受け入れられずに拒絶した。

しかし、最終的には喜多村のペニスを咥え込まされ、生温かいものまで飲まされた。

陽介の心と体はこうして破壊され、その対価として、スターの地位を手に入れたのだった。