泥々の川

フロイライン

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終わり良ければ

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「久美子

一体どうやってあのオバサンの支持を取り付けたんだよ。」


行きとは違い、帰りは饒舌になった甲斐は、後部座席の久美子に質問した。


「いえ、ワタシは何も…
でも、ワタシの身の上話を聞いて下さって、少し同情していただいた部分もあるかと思います。」


「なるほどな。
久美子のこれまでの人生は壮絶だもんな。」


「でも、甲斐さん

典子さんてフツーに優しくて、すごく話しやすい方でしたし、気難しい感じでもなかったんですけど…」


「あくまでも業界内の噂だよ、噂」


「そんな噂があるんですか?」


「聞いたことないか?
事務所を独立したら、暗黙の了解で何年かはテレビに出られないって話。

事務所が局に圧力かけるって。」


「えっ、知りません。

ウチの事務所もそうなんですか?」


「ウチは弱小だから、そんな事しないよ。
っていうか、出来ないよ。」


「って事は、典子さんは個人であるにもかかわらず、すごく力を持っていて、ワタシのようなオカマは、あの人に嫌われたら生きていけないと?」


「まあ早く言えばそういうことだろうね。

あの人、シャンソン歌手だし、テレビのバラエティ番組にもよく出てるし、お店も経営されてるし、とにかくネットワークがすごいんだよ。
あの人に嫌われたオカマは芸能界はおろか、東京の夜の街でも生きていけないそうだよ。」


「そうだったのかあ。
嫌われなくてよかったあ」


「一つ言えることは、この世で一番怖いのは、オカマだよ。」


「えっ、なんでですか?」


「だって、オカマってやつは、男の腕力と女の陰湿さを併せ持った人種なんだからな。

怖いに決まってるよ。」


「ひどーい、甲斐さん。

ワタシ、どっちもありません!」


「久美子は後天性のオカマだからな。

陰湿さもなければ腕力もない。

可愛いヤツさ」


甲斐は自分で言っておきながら自分で大ウケし、ケラケラと笑った。


「甲斐さん
その陰湿で腕っぷしの強い典子さんから、今度ご飯でも食べに来なさいってお誘い受けたのよ。

一緒に行きます?」



「えっ、ホントか?

行かないよ、俺は。

久美子みたいな可愛げのあるオカマちゃんならいいけど、年増で厳ついのは勘弁願いたいわ、プライベートな時間は特にな。」


「そう言うと思ってた。
ワタシは典子さん好きだから、一人で行ってくるね。」

久美子は膨れっ面で、甲斐に言った。
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