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上京物語
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新幹線ひかり号に乗って3時間10分の旅を終えた久美子は、東京駅に降り立った。
ホームまで甲斐が出迎えに来ており、久美子を見つけると手を振りながら歩いてきた。
「お疲れさん。」
「甲斐さん。わざわざすいません
迎えに来ていただいて…」
「どないや?
初めての新幹線と東京は」
「もう最高です。
新幹線はガタガタ揺れへんし、静かやし。
東京も、大阪と違うて、街並みがめっちゃ綺麗ですね。
国会議事堂も見えましたよ。」
久美子は興奮気味に言った。
「さすがに首都やからな。
大阪と比べんのは酷やで。
ほな、早速やけど久美子の新居に行こか」
甲斐は、久美子の大きなボストバッグを肩からかけて歩き出した。
「甲斐さん、重いでしょ?
ワタシ、自分で持ちます」
「ええねんええねん
久美子はウチの大事なタレントさんや。」
甲斐は笑いながら階段を降りていった。
久美子はタレントとして大事にされているということより、自分が女性として扱われている事に感動し、少し顔を紅潮させながらその後をついていった。
「山手線で秋葉原まで行って、そこから少し歩いて、岩本町から都営新宿線に乗って東大島駅で下車や。」
「はい。わかりました
いえ、どこまで行くんかさっぱりわかりませんけど。」
「区で言うたら、江東区や。
東京は電車網も発達してるし、どこに住んでも連絡はええよ。」
「それは思います。
路線図見ても大阪の倍くらいありますねえ。
いや、もっとか。」
「大阪の地下鉄なんて御堂筋線に四つ橋線、中央線と千日前線、谷町線、堺筋線くらいやったかな
他に何かあったっけ?」
「そんなもんとちゃいますか。
東京は都営と営団て会社が二つもあるんですね。」
「そうやなあ。
久美子は鉄道好きか?」
「はい。
好きです。」
「お前、ところどころに男やった時の名残りを感じさせるよなあ。」
「そうなんです。
突然変異のオカマやし、芯の部分は完全に男なんです。」
「まあ、そういうギャップも魅力なんやろな。
完璧な容姿と中身とのな。」
「褒めてくれてるんですね?」
「ああ、褒めてるよ。
だからこそ、ウチの会社は久美子に投資して全てを賭けてるねん。」
「ひえーっ
責任重大やわ。」
「久美子やったら間違いなく成功出来るよ。
それに大手の事務所が幅をきかすこの東京で、ウチのような新参者が力を発揮しようと思ったら、久美子みたいなレディーボーイっていうニッチなジャンルで勝負するしか勝ち目はないねん。
この分野の先駆者となる礎を築くんが、久美子の役目であり、俺の仕事でもある。」
いつになく真剣な表情で、久美子に語りかける甲斐だった。
ホームまで甲斐が出迎えに来ており、久美子を見つけると手を振りながら歩いてきた。
「お疲れさん。」
「甲斐さん。わざわざすいません
迎えに来ていただいて…」
「どないや?
初めての新幹線と東京は」
「もう最高です。
新幹線はガタガタ揺れへんし、静かやし。
東京も、大阪と違うて、街並みがめっちゃ綺麗ですね。
国会議事堂も見えましたよ。」
久美子は興奮気味に言った。
「さすがに首都やからな。
大阪と比べんのは酷やで。
ほな、早速やけど久美子の新居に行こか」
甲斐は、久美子の大きなボストバッグを肩からかけて歩き出した。
「甲斐さん、重いでしょ?
ワタシ、自分で持ちます」
「ええねんええねん
久美子はウチの大事なタレントさんや。」
甲斐は笑いながら階段を降りていった。
久美子はタレントとして大事にされているということより、自分が女性として扱われている事に感動し、少し顔を紅潮させながらその後をついていった。
「山手線で秋葉原まで行って、そこから少し歩いて、岩本町から都営新宿線に乗って東大島駅で下車や。」
「はい。わかりました
いえ、どこまで行くんかさっぱりわかりませんけど。」
「区で言うたら、江東区や。
東京は電車網も発達してるし、どこに住んでも連絡はええよ。」
「それは思います。
路線図見ても大阪の倍くらいありますねえ。
いや、もっとか。」
「大阪の地下鉄なんて御堂筋線に四つ橋線、中央線と千日前線、谷町線、堺筋線くらいやったかな
他に何かあったっけ?」
「そんなもんとちゃいますか。
東京は都営と営団て会社が二つもあるんですね。」
「そうやなあ。
久美子は鉄道好きか?」
「はい。
好きです。」
「お前、ところどころに男やった時の名残りを感じさせるよなあ。」
「そうなんです。
突然変異のオカマやし、芯の部分は完全に男なんです。」
「まあ、そういうギャップも魅力なんやろな。
完璧な容姿と中身とのな。」
「褒めてくれてるんですね?」
「ああ、褒めてるよ。
だからこそ、ウチの会社は久美子に投資して全てを賭けてるねん。」
「ひえーっ
責任重大やわ。」
「久美子やったら間違いなく成功出来るよ。
それに大手の事務所が幅をきかすこの東京で、ウチのような新参者が力を発揮しようと思ったら、久美子みたいなレディーボーイっていうニッチなジャンルで勝負するしか勝ち目はないねん。
この分野の先駆者となる礎を築くんが、久美子の役目であり、俺の仕事でもある。」
いつになく真剣な表情で、久美子に語りかける甲斐だった。
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