泥々の川

フロイライン

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charm

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「えっ、東京に?」

「そやねん。
芸能界で頑張ろう思うんやったら東京に出るしかないって。」


久美子は引っ越すことを報告しに、実家の父の元を訪れていた。


「お前の出てたポルノ映画なあ。
新世界の映画館で見たんやけど、結構客も入っとったし、綺麗に撮れてたで。」


「えっ、見たん?
恥ずかしいわあ。」


「俺の娘やと思われへんかったし、何か不思議な気持ちになってもた。」


「お父さん、ありがとう
ウチのこと娘や言うてくれんねんね。」


「当然やろ。
そこまで美人になったらな。
息子とは言えんわ。」

誠はランニングシャツに首からタオルをかけた状態のスタイルで座っていたが、久美子に今の正直な気持ちを伝えた。

「それでな、今日来たんは他でもないんやけど。

ウチと一緒に東京行かれへんかなあって。」


「東京?
ワシがか?」


「そうそう。
お父さんをこっちに置いたまま離れんのイヤやし…
向こう行ったら結構広い部屋借りてくれるみたいやねん。
どやろ?」


「アホっ
ワシが東京なんて行けるわけあらへんがな。

大阪の、しかもコッテコテの下町で生まれ育ってきたんやで。
東京どころか、今お前が住んでる阿倍野や帝塚山に住めと言われても断るわ、ワシの場合は。」


「やっぱり、そう言うと思ったわ。
でも、お父さん残して向こう行くん、ワタシめちゃくちゃ心配やし…」


「久美子、お前が女として生きなあかんようになったんは、ワシのせいや。
せやのにお前はワシを責めようともせんし、こうやっていつも心配すらしてくれて、度々顔見に帰ってきてくれてる。

ホンマに感謝しかないんや。おおきに…」


誠は畳に手を付いて頭を下げた。


「もう、お父さん
そういうのやめて

ワタシはお父さんの事大好きやし、女として生きる様になった事も恨んでなんかあらへん。
むしろ感謝してるくらいや。
自分のホンマの気持ちに気づかせてもろたんやから。

ウチの事務所のマネージャーさんが言うにはな、ワタシが他のレディーボーイよりキレイなんは、十五で去勢して女性ホルモン始めたかららしいわ。

ワタシ、声変わりもしてへんかったし、第二次性徴もあんまり体に出てきてへんかったから。
運が良かったんやと思うわ。」


「久美子…」


「どうやろ?
一緒に来られへんやろか…」


「お前の厚意は涙が出るほど嬉しいんやけど、ワシにはやっぱり東京はムリや。

ここでお前の活躍を応援させてもらうわ。」


誠は結局、一緒に上京することを固辞。

久美子も説得を諦め、実家を後にした。



「次は恭子か…」

さらなる強敵を相手にしなければならない久美子は、憂鬱そうに呟いた。
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