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孝行娘
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誠が仕事から帰ってくると、部屋には百恵が来ており、部屋が綺麗に掃除されていた。
「なんや、袮留来てくれとったんか。」
「うん。ワタシ、今日仕事休みにしたし、ちょっとご飯でも作ろう思てな。」
「そんなんせんでええのに。
休みやったら、家でゆっくりしたらええやないか。」
「一緒に住んでた姉さんがおらんようになって、家に一人でおっても何か寂しいなってな。」
「そうか。
それやったら、気持ちに甘えるわ。」
「ワタシも一緒に食べよう思て、カレー作ってん。
食べるやろ?」
「おう、外まで匂いしとったから、何作ってるかわかったけどなあ」
誠はそう言って笑った。
誠は百恵に対し、罪悪感を持っていたが、百恵自身が全面的に許したために、このような親子関係が成り立っているのだ。
「お、これは美味いな。
お前腕上げたなあ。
家におる時はこんなん作れんかったやんけ」
百恵が作ったカレーを一口食べた誠は、娘の腕前を褒めた。
「あの時は材料買うお金も無かったしなあ。
今はこうやって牛肉も入れれるし、やっぱりカレーはビーフに限るんとちゃう?」
「そうやなあ。
色々お前にも苦労かけたな。」
「お父さん、もうそれは言わん約束やで。」
「ああ、スマン…
ところで、最近仕事の方はどうなんや?」
「ワタシはボチボチやねんけどなあ。
大野さんがしんどいみたいやねん。」
「ほう、あの人
金儲けの才覚があったのになあ。」
「見せ物小屋を解散したんも痛かったと思うけど、こっちの方も今はワタシしか残ってへんし、一人だけじゃあなかなか儲からへんわ。」
「新しい人間は入れへんのか?」
「お父さんも知ってると思うけど、この辺の立ちんぼは全部ヤクザが絡んでるやろ?
大野さんみたいな非ヤクザの人はもうおらへんのよ。
だから新しい子らは基盤の弱いウチには来えへんし、みんなバックに強いヤクザがおるとこを選ぶんよね。」
「そうなんか。
お前らの世界もなかなか大変なんやな。」
「でも、ワタシは自分の仕事が好きやし楽しいで。
出来るとこまで続けたいと思てるねん。」
百恵はそう言うと、カレーを口に運んだ。
「あ、そうや!
姫路の件はすまんかったな。
あんなガセネタ言うてしもて。」
「ええねん、それは。
お母さんもいつかは見つかると思うし」
「俺に嘘教えよったヤツにもう一回聞いてみたんや。ブチ切れながらなあ。」
「その人可哀想やん。やめてあげてよ。」
「でも、たしかに恵理子を見た言うてな。
姫路におるんは間違いないと思う。」
「そうなん。
じゃあ、絶対に会えるわ。」
百恵は母への思いを馳せながら言った。
「なんや、袮留来てくれとったんか。」
「うん。ワタシ、今日仕事休みにしたし、ちょっとご飯でも作ろう思てな。」
「そんなんせんでええのに。
休みやったら、家でゆっくりしたらええやないか。」
「一緒に住んでた姉さんがおらんようになって、家に一人でおっても何か寂しいなってな。」
「そうか。
それやったら、気持ちに甘えるわ。」
「ワタシも一緒に食べよう思て、カレー作ってん。
食べるやろ?」
「おう、外まで匂いしとったから、何作ってるかわかったけどなあ」
誠はそう言って笑った。
誠は百恵に対し、罪悪感を持っていたが、百恵自身が全面的に許したために、このような親子関係が成り立っているのだ。
「お、これは美味いな。
お前腕上げたなあ。
家におる時はこんなん作れんかったやんけ」
百恵が作ったカレーを一口食べた誠は、娘の腕前を褒めた。
「あの時は材料買うお金も無かったしなあ。
今はこうやって牛肉も入れれるし、やっぱりカレーはビーフに限るんとちゃう?」
「そうやなあ。
色々お前にも苦労かけたな。」
「お父さん、もうそれは言わん約束やで。」
「ああ、スマン…
ところで、最近仕事の方はどうなんや?」
「ワタシはボチボチやねんけどなあ。
大野さんがしんどいみたいやねん。」
「ほう、あの人
金儲けの才覚があったのになあ。」
「見せ物小屋を解散したんも痛かったと思うけど、こっちの方も今はワタシしか残ってへんし、一人だけじゃあなかなか儲からへんわ。」
「新しい人間は入れへんのか?」
「お父さんも知ってると思うけど、この辺の立ちんぼは全部ヤクザが絡んでるやろ?
大野さんみたいな非ヤクザの人はもうおらへんのよ。
だから新しい子らは基盤の弱いウチには来えへんし、みんなバックに強いヤクザがおるとこを選ぶんよね。」
「そうなんか。
お前らの世界もなかなか大変なんやな。」
「でも、ワタシは自分の仕事が好きやし楽しいで。
出来るとこまで続けたいと思てるねん。」
百恵はそう言うと、カレーを口に運んだ。
「あ、そうや!
姫路の件はすまんかったな。
あんなガセネタ言うてしもて。」
「ええねん、それは。
お母さんもいつかは見つかると思うし」
「俺に嘘教えよったヤツにもう一回聞いてみたんや。ブチ切れながらなあ。」
「その人可哀想やん。やめてあげてよ。」
「でも、たしかに恵理子を見た言うてな。
姫路におるんは間違いないと思う。」
「そうなん。
じゃあ、絶対に会えるわ。」
百恵は母への思いを馳せながら言った。
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