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運命の綾
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自分の教え子の男子生徒が女性の姿で現れた事に驚きの色を隠せなかった松田であるが、すぐにある事に気付き、質問をした。
「友谷、お前
なんか体付きも女みたいになっとるけど、一体それは…」
すると、マキが代わって説明をした。
「先生、この子は連れてかれてからすぐに去勢手術を受けさせられて、そっからずっと女性ホルモンの注射をしてるんです。
もう二年以上になります。
だから体付きも女みたいに変化してるんですわ。」
「そうなんですか…」
松田は説明を聞き、明らかに元気をなくしてしまった。
不思議に思ったマキは
「どないしはったんです?」
と、言った。
松田は、マキ、百恵の顔を順に見てから、話し始めた。
「友谷は入学してきた頃から、とにかく足が速く、徒競走をさせたら誰も勝てませんでした。
一年だけでなく二年、三年でも。
恐ろしいくらいの天賦の才に恵まれた友谷に、私は自分が顧問をしている陸上部へ入ることを勧めました。
しかし、友谷は親の同意が得られないと、固辞をして、陸上部には入りませんでした。
私は本当にもったいないと思い、競技に必要な靴や練習着などを個人的に援助しようと提案しましたが、それでも父親からは反対されたようでダメでした。」
「そうやったんですね…」
マキは百恵の方に視線を向け、小さな声で言った。
「しかし、三年になっても友谷の才能は錆びつく事もなく、体育の時間に走らせたら、やっぱりずば抜けて速かったんです。
あの、推薦入学て知ってますか?」
「ええ。スポーツとかで秀でてる生徒が優先的に入れるやつですね?」
「そうです。
大阪で陸上が強いといえば成秀学院です。
家庭の事情で中学で陸上が出来ないのなら、成秀に推薦で入れたら学費も免除やし、高校で友谷の才能を伸ばせると思たんです。
私は資料を取り寄せ、後は友谷にその話をして親父さんを説得するだけとなってました。
でも、それ以来、友谷は学校に来んようになり、行方がわからんようになってしもた…
って話です。」
「何や、アンタ
そんなに足速かったんか。」
「中学の時は…はい…」
百恵は照れくさそうに言った。
百恵をじっと見つめていた松田だったが、何かを思い立ったのか、徐に百恵に話しかけてきた。
「友谷、今でも走れるんか?」
と。
「先生、とんでもありません。
今はムリです。」
百恵は少し寂しげな表情を浮かべて答えた。
「友谷、お前
なんか体付きも女みたいになっとるけど、一体それは…」
すると、マキが代わって説明をした。
「先生、この子は連れてかれてからすぐに去勢手術を受けさせられて、そっからずっと女性ホルモンの注射をしてるんです。
もう二年以上になります。
だから体付きも女みたいに変化してるんですわ。」
「そうなんですか…」
松田は説明を聞き、明らかに元気をなくしてしまった。
不思議に思ったマキは
「どないしはったんです?」
と、言った。
松田は、マキ、百恵の顔を順に見てから、話し始めた。
「友谷は入学してきた頃から、とにかく足が速く、徒競走をさせたら誰も勝てませんでした。
一年だけでなく二年、三年でも。
恐ろしいくらいの天賦の才に恵まれた友谷に、私は自分が顧問をしている陸上部へ入ることを勧めました。
しかし、友谷は親の同意が得られないと、固辞をして、陸上部には入りませんでした。
私は本当にもったいないと思い、競技に必要な靴や練習着などを個人的に援助しようと提案しましたが、それでも父親からは反対されたようでダメでした。」
「そうやったんですね…」
マキは百恵の方に視線を向け、小さな声で言った。
「しかし、三年になっても友谷の才能は錆びつく事もなく、体育の時間に走らせたら、やっぱりずば抜けて速かったんです。
あの、推薦入学て知ってますか?」
「ええ。スポーツとかで秀でてる生徒が優先的に入れるやつですね?」
「そうです。
大阪で陸上が強いといえば成秀学院です。
家庭の事情で中学で陸上が出来ないのなら、成秀に推薦で入れたら学費も免除やし、高校で友谷の才能を伸ばせると思たんです。
私は資料を取り寄せ、後は友谷にその話をして親父さんを説得するだけとなってました。
でも、それ以来、友谷は学校に来んようになり、行方がわからんようになってしもた…
って話です。」
「何や、アンタ
そんなに足速かったんか。」
「中学の時は…はい…」
百恵は照れくさそうに言った。
百恵をじっと見つめていた松田だったが、何かを思い立ったのか、徐に百恵に話しかけてきた。
「友谷、今でも走れるんか?」
と。
「先生、とんでもありません。
今はムリです。」
百恵は少し寂しげな表情を浮かべて答えた。
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