泥々の川

フロイライン

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SEVENTEEN MAP

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昭和51年になり、百恵は十七歳の誕生日を迎えた。

「ただいま」


「お帰り…

あら、百恵、その髪型!」


美容院から帰宅した百恵の髪型を見て、マキは驚きの声を上げた。


「ランちゃんの髪型にしてもらったの。

似合う?」


「まあ似合うゆーたら似合うけど、アンタ
山口百恵のそっくりさんが売りやろ?

キャンディーズって…」


「百恵ちゃんも今は髪長いし、ウチの髪型と段々かけ離れていってたし

ちょっとイメチェンしたいと思うて。」


「まあ、ええんとちゃうか。
ご飯まだやろ?
作っといたし、早よ食べ。」

「姉さん、おおきに。

でも、今からアレ始まるし」


「は?

何やのよ

何かあったっけ、今日?」


「姉さん、何言うてんのよ、
猪木とアリの異種格闘技があるやないの。

知らんかった?」


「知らん知らん。

そんなん誰が興味あんのよ。
少なくともワタシは全くあらへん。」


「うわあ、信じられへんわ。

ウチは、大部屋のテレビ見てくるし」


「さよか。
それやったら早よ行ってきいや。

ウチはちょっと横になっとくわ。」

マキがそう言うと、百恵は頷いて、そそくさと家を出て行った。

巨乳でランちゃんの髪型にしたり、身なりを気にしつつも、百恵の本質はやっぱり男なんだなあと、改めて認識するマキだった。


百恵が大部屋に入ると、小屋のメンバーがテレビの前に集まっていた。


「お邪魔しまーす」


「おう、百恵か」


「遠崎さん、まだ始まってへんの?」


「これからや。

もっと前来て見い。」


「おおきに、遠崎さん。」

百恵は遠崎の言葉に甘え、テレビの前に陣取った。


「猪木勝てるかなあ。」


「そら、わからんわ。

アリ相手に八百長の話がでけてるとは思えんしなあ。」

横にいた重岡が言うと、百恵は目を見開いて驚いた。


「えーっ!
八百長なん?」


「んなん当たり前やろ。

プロレスはスポーツちゃうで、興行や興行。

言うたらワシらと一緒や。

ホンマもんを見るんやったらボクシングしかないやろ。

藤猛は凄かったなあ。
大場政夫もなあ」


「ふうーん、そうなんかあ。」


「百恵はスポーツ得意なんか?」


「うん。

今はもうあかんけど、走るんは誰にも負けた事ないよ。
小学校から中学まで一度も。」

百恵はそう言うと、自嘲気味に笑った。
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