泥々の川

フロイライン

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袮留は、マキに案内されて部屋に入った。

「お邪魔します…」


「子供のくせに遠慮せんでええよ。
しばらくはここで寝泊まりしたらええからね。

何もないところやけど。」


マキは座布団を出して、袮留に座るように促しながら言った。


「すいません。
座らせていただきます」


「だからあ、遠慮せんときて。
せやけど、アンタ
ほんまにキレイな顔してんなあ。

男の子やとは思われへんわ。」


「自分ではわかんないです。」


「ワタシもキレイな子の方が嬉しいし。
色々面倒見たるさかい、安心しいや。」

マキはニコッと笑った。


「ありがとうございます。」


「ネルちゃんなあ、ここの事をまだようわからんと思うからちょっと説明しとくわ。」


「はい。お願いします。」


「アンタをここに連れて来たんは、大野さん言うて、ワタシらの雇い主や。

聞いたかもしれんけど、主な仕事は見せ物小屋やな。

でも、最近はテレビに押されてしもて、見せ物小屋なんて絶滅寸前にまで追い込まれてるねん。」


「そうなんですか」


「うん。
それと、もう一つの仕事が、ワタシも含まれんねんけど、客引きや。」


「客引き?」


「男の人からお金もろて、ヤラせたる事な。」


「…はい。」


「最近はこっちの方が儲かってるねんけど、見せ物小屋の演者はプライドがあるんか知らんけど、ワタシらの事バカにするんよ。」


「へえ、そうなんですね。」


「だから、ワタシらと小屋の連中は仲が悪いってわけ。

でも、アンタには関係ないし、向こうもそうやろうから、明日の朝にみんなを紹介するわ。」


「はい。
ありがとうございます、マキさん。」


「マキって呼ばれるんより、ちゃう呼び方の方がええわ。」


「えっ、じゃあ、何て?」


「せやなあ。
姉さんて呼んでや。」


「わかりました。

では、姉さん

僕はここでどんな仕事をすればいいんでしょうか。」

袮留は不安そうな表情でマキに聞いた。


「まあ、そのうちわかるわ。

その前に昼からちょっと出かけるから」


「はい、わかりました。」


「まあ、そう畏まらんでええから。

よっしゃ、ご飯食べに行こか。
袮留ちゃんがここに来てくれたお祝いや。」


「すいません…
僕、お金が…」


「そんなん言いな。

子供にお金出さそうなんて思わへんがな。
ワタシが出すから。

何が食べたい?」


「えっと…何でも…」


「この先に美味しいお好み焼き屋があるねん。

そこでええか?」


「はい。」


袮留は、マキに晩御飯をご馳走してもらう事になり、恐縮しながら後ろを歩いた
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