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無反省
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「ガンちゃん」
通りを歩いていた洹治は、後ろから呼び止められ、振り返った。
「なんや、誠っちゃんかいな。
どないしたんや。」
「いや、酒代が無うなってしもてな、来月必ず返すさかいに、少しばかり都合してんか。」
「アンタ、あれだけ痛い目に遭うて、まだ働きもせんとそんな事してるんかいな。」
「いや、お恥ずかしいかぎりや。」
「袮留君の事知ってんのか?」
さっきの恭子といい、今の洹治といい、今日はやたらと袮留の事を聞かれる…
誠は、少し辟易としながら聞き返した。
「袮留がどないしましたんや?」
「なんや、知らんのかいな。
アンタの借金のせいで犠牲にしといてからに。」
「それは…
いや、袮留がどうしたんでっか?」
「釜ヶ崎の方でな、男娼として客取ってるらしいで。」
「袮留が…」
「せや。
アンタに売られてすぐに病院に連れてかれて、金玉摘出して、ブルーボーイ?レディボーイ?っちゅうやつか?
なんか、そんなんになってるって。
袮留君を買うたヤツの話じゃ、胸もえらい大きゅうに膨らんどって、体つきも女の子みたいやったって言うとったわ。」
「…」
「アンタも父親やったら、改心して真面目に働いて金稼いで、早よう袮留君を取り戻しに行かなあかんのとちゃうか。」
誠は、洹治の話を聞いて、あまりの衝撃に言葉を失ってしまった。
「ホラ、酒代くらい貸したる。
いや、くれてやるわ。
だから、今日でこんな生活はやめて、明日から心入れ替えて働くんやで。
それが息子はんのためやろ。」
洹治はそう言うと、千円札を誠に手渡し、その場を去っていった。
誠は呆然と立ち尽くしていたが、きっちり酒だけは買って帰るところが、やはり…
ろくでなしであり…
通りを歩いていた洹治は、後ろから呼び止められ、振り返った。
「なんや、誠っちゃんかいな。
どないしたんや。」
「いや、酒代が無うなってしもてな、来月必ず返すさかいに、少しばかり都合してんか。」
「アンタ、あれだけ痛い目に遭うて、まだ働きもせんとそんな事してるんかいな。」
「いや、お恥ずかしいかぎりや。」
「袮留君の事知ってんのか?」
さっきの恭子といい、今の洹治といい、今日はやたらと袮留の事を聞かれる…
誠は、少し辟易としながら聞き返した。
「袮留がどないしましたんや?」
「なんや、知らんのかいな。
アンタの借金のせいで犠牲にしといてからに。」
「それは…
いや、袮留がどうしたんでっか?」
「釜ヶ崎の方でな、男娼として客取ってるらしいで。」
「袮留が…」
「せや。
アンタに売られてすぐに病院に連れてかれて、金玉摘出して、ブルーボーイ?レディボーイ?っちゅうやつか?
なんか、そんなんになってるって。
袮留君を買うたヤツの話じゃ、胸もえらい大きゅうに膨らんどって、体つきも女の子みたいやったって言うとったわ。」
「…」
「アンタも父親やったら、改心して真面目に働いて金稼いで、早よう袮留君を取り戻しに行かなあかんのとちゃうか。」
誠は、洹治の話を聞いて、あまりの衝撃に言葉を失ってしまった。
「ホラ、酒代くらい貸したる。
いや、くれてやるわ。
だから、今日でこんな生活はやめて、明日から心入れ替えて働くんやで。
それが息子はんのためやろ。」
洹治はそう言うと、千円札を誠に手渡し、その場を去っていった。
誠は呆然と立ち尽くしていたが、きっちり酒だけは買って帰るところが、やはり…
ろくでなしであり…
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