タイは若いうちに行け

心境

「はい。
もう服を着てもらって大丈夫ですよ。」

神野先生はワタシの診察を全て終えたようだ。


「手術後の状態も良いみたいだし、ダイレーションも真面目にやっていて感心したよ。」


「はい。
癒着するの嫌ですもん。

もうあんな痛い思いしたくないから、再手術とか絶対イヤです。」


「うん。
今のところ大丈夫だよ。」


「先生
ここってワタシみたいな性適合手術を受ける人とか、沢山いるんですね。
さっき待合室にいるとき、それらしい人が何人かいました。」


「まあ、ここは国内ではそれなりに有名だからね。

遠いところから通う人もいるよ。」


「へえ、そうなんですね。」


「酒井さんは自分の意思ではない形で手術をされたわけだけど、ここに来る人達はみんな自分の性に違和感があって、最終的には性適合手術を希望をしているんだ。

日本も一時の事を思えば、手術の技術は勿論、制度もかなり進んだといえる。」


「なるほど、そうなんですね。」


「何年か前から手術に保険が適用されるようになったしね。」


「へえ。」


「でも、既に自己判断で女性ホルモンの投与を行っていたら、保険適用外となるんだ。」


「厳しいですね」


「まあ、キミには関係のない話だね。

ところで、松本先生のところへは？」


「はい。
この後行く予定しにています。」


「松本先生ともタイ以来だね。」


「ええ。

神野先生が岡山だって事は知っていましたが、まさか松本先生も岡山におられるとは思ってもみませんでした。」


「松本先生は、この近くで開業されるまでは、この大学病院におられてね。

だから、岡山にいるのは当然といえば当然なんだよ。」


「そうなんですね。

お会いするのが楽しみです。」


「松本先生は性同一性障害の人達のメンタルケアを専門とされているし、私が受け持つ患者さんも多く通っているんだ。

まあ、よろしくお伝えしてくれたまえよ。」



神野先生の診察を終えた私は、清算を済ませて病院を出た。

時刻は既に昼を過ぎており、とりあえずご飯を食べる事にした。
どちらにしても松本先生のところの予約は14時なので、まだ一時間以上暇をつぶさなきゃならない。

少し歩いたら、食堂があって、中を見たらなかなかオシャレな感じだったので、勇気を出して入ってみた。

こういうところに一人で来るのは勇気がいる。


ワタシは名物だというアジフライ定食は頼まず、チーズインメンチカツの定食を注文した。

男だった時からの大好物なんで…


でも、全部食べることが出来なかった。

そうそう…
最近、なんか知らないけど食が細くなったような気がする。

体質まで変わっちゃったのかな

性転換して、ホルモンバランスが崩れて太りやすくなるって言われてるし、これくらいが丁度いいのかもね