聖也と千尋の深い事情

まわりゃんせ

「千尋ちゃん、いらっしゃい」

オカンが我が家を訪ねてきた千尋を招き入れた。


「おはようございます。

今日からお世話になります。よろしくお願いします。」

千尋は別荘に呼んでもらった事を感謝し、頭を下げた。


つづいて、親父が顔を覗かせ、千尋と初対面

「おはよう」

と、声をかけた。

「お父さん、ねっ、千尋ちゃんてすごく可愛いでしょー」

と、オカンが嬉しそうに言うと

「おーん、そやなあ。
女の子みたいな顔してんねんなあ。」

と、親父も同調した。

「千尋ちゃん、途中までは電車で行くけど、いい？」

「あ、はい。
あの、切符は…」

「それはもう買っておいたから大丈夫よ」


「いえ、それは…
おいくらですか？」


「いいのいいの。二人席で買っといたからね。
千尋ちゃんは進行方向に沿った席に座るのよ」　

って。

浮かれすぎなんだよ、オカン。
まあ、千尋みたいな美少年を見るとウキウキすんのもわかるけど。

でも、本当に浮かれてるのは俺なんだけど。


もし、千尋が女子ならウチの両親もめっちゃ気を遣うだろう。
俺と一緒にいて、何か間違いがあったら千尋の親に顔合わせ出来ないって思うから。
まあ、それはフツーのことだよな。

でも、一応千尋の性別は男なわけで、俺と行動を共にしても何の問題もないと考えているに違いない。
だからこうやって家族旅行のメンバーに加えたんだろう。



ウチの家族三人と千尋を合わせた四人は、難波まで出て、難波駅から近鉄特急伊勢志摩ライナーに乗って現地に向かった。

この伊勢志摩ライナーは四人掛けの二人ずつが向かい合う席があるんだけど、千尋が気を遣っちゃいけないって事で、二人掛けで一人ずつ向かい合える席を2セット取り、片方を両親、もう一つを俺と千尋にあてがった。

オカンの希望通り、千尋は進行方向に沿った席、俺は反対側に座らされた。
三半規管が弱い奴なら酔うぞ。

電車の中で、駅で買った弁当をそれぞれ食べたんだけど、そこで千尋が親がいるのを忘れてしまい…

「あ、このお茶なんか美味しいよ、聖也」

と、言って自分が口をつけたペットボトルを俺に手渡してきた。

俺もそれを受け取って一口飲み

「ホンマや。なんか不思議な風味や」

と言って返した。

最近の俺らにとってはごく自然にやってる事なんだけど、
この仲の事を知らないオカンは当然驚くわけで

「千尋ちやん、聖也に口つけさせたらあかんよ。
汚いんやから」

汚い…親とは思えない発言…

「いえ、大丈夫です。」

指摘を受けて、ようやく自分の行為に気付いた千尋は顔を真っ赤にして、オカンに言った。

まあ、お互い会えば毎日キスしてる仲だし、千尋に至っては俺のちんちんも舐めたりしてるわけで…
お茶の回し飲みなんてどうってことないのさ。