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Afternoon tea

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昼を食べ終え、俺は千尋と再び家に戻ってきた。

ゲームをしない千尋との時間潰しをどうしようかと思ったが、千尋は饒舌に色んな話をしてくれて、また、俺の話も聞きたがった。

好きな食べ物、誕生日はいつ?、最近面白かった事、家族構成とその仲、田舎はどこ?などなど

聞き上手で話し上手な千尋に、俺は心を許してることもあったが、楽しくて、柄にもなくよく喋った。
時間が経つのも忘れ…
長居するのも悪いと気にする千尋を引き留めてまで。




玄関の扉が開く音がした。

四時…

オカンが仕事から帰ってきた。

千尋は(しまった!)みたいな顔で、俺を見つめたが
もう遅い。

オカンは部屋の扉を開けて、見慣れぬ靴の持ち主を確認に来た。

「ただいまー

あらっ、お友達?」

と、言って、少し固まりやがった。


まあ、俺が友達を連れてくるなんてほぼ無い事だからなあ。


「お邪魔してます

一条と申します。」

千尋は立ち上がって、オカンに向かって頭を下げた。


「聖也がお友達を連れてくるなんて珍しいから、お母さんビックリしちゃったわ

ゆっくりしていってね」

と、オカンも礼儀正しい千尋の姿に笑顔を取り戻して、部屋を出てった。


「ごめん、オカンのやつ
俺が友達を呼ぶなんてした事ないから、千尋のことを興味津々で見に来たんだよ。」


「ごめん、楽しくて長く居すぎちゃったね。

そろそろ帰るわ」


「なんか、ごめん」


「ううん。
また来てもいい?」


「うん。来てくれよ、いつでも」


そう言うと、千尋は嬉しそうな表情で頷いて立ち上がった。



「すいません。

お邪魔しました」

俺の後ろを付いてきた千尋は、オカンにペコリと頭を下げた。


「あら、もう帰っちゃうの?

ケーキ買ってきたから、今出そうとしてたの。
これだけでも食べてって。」


「いえいえ、本当におかまいなく。
ありがとうございます」

千尋は丁重にことわった。


俺はマンションの下まで千尋を見送りに行き、その姿が見えなくなるまで手を振った。



家に帰ってくると、オカンがすっ飛んできた。


「どうしちゃったのよ、アンタ!」


「な、何やねん」


「女の子連れてくるなんて!

カノジョ出来たんならお母さんに言ってよ」


「え、千尋のこと?」


「千尋ちゃんていうの?

可愛い娘ね。どうやったのよ、ねえ

アンタから告白したの?」


「あの、俺がそんなん出来ると思うか?」


「えっ、何?」


「千尋は男やで

一緒のクラスの友達やん」


「えーっ!
あの子、男なの!?

なんという美形…

礼儀正しいし可愛いし、お母さん千尋ちゃんのことすごく気に入っちゃったわ。

また、遊びに来るように言ってね。
お母さんがいる日にね」


「わかったよ。
今度は日曜日に呼ぶわ…

あ、オトンがおるか…それはイヤやなあ。」


まあ、オカンが千尋を女子と間違えるのも無理もない事だよな。

制服着てるならまだしも、今日みたいな私服着てたら、見た人は十中八九女子と間違える事だろう。

俺は千尋と仲良くなれた事が、何だか誇らしく思えた。
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