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フロイライン

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戦果

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遥が下に行くと、栄子が待ち構えており、近づいてきて言った。

「遥ちゃん、ごめんね
イヤなこと頼んじゃって。」


「いえ…」


「あの、それでどうだったの?
中に入れた?」


「はい。
中に入らせてくれました。
そこでしばらくお話をして…

って感じです。」


「ありがとう!

あの子がここまで心を開いたのは、帰ってきてから初めての事よ。

遥ちゃんにお願いして本当に良かったわ。」

栄子は今にも泣き出しそうな面持ちでそう言い、頷いた。


「でも、結局出てきてくれはしませんでした。

色々と辛い事があったと思いますので、気長に待ってあげてくださいね。

絶対に、時間が解決してくれると思いますので。」


「そ、そうね!

肝に銘じるわ。」

「遥ちゃん、すまなかったね。
イヤな役をやらせて。」

夫婦は遥に深く感謝し、頭を下げた。


「遥ちゃん、お腹すいたでしょ?

大したものはないんだけど、ゆっくり食べていって。

東京での話も聞きたいし。」


「あ、お気遣いなく。
ワタシ、瑛太の顔を見に来ただけなので」


「いやいや、せっかく来てくれたんだ。
せめて食事くらいしていってください。」

宏太も頭を下げて言った。


栄子も夫に同調し、遥に何かを言おうとしたが、何も言わなかった。

遥は、栄子の方を見た。

栄子は遥の方を見ず、視線が違う方向を向いていた。
顔色を失いながら…

遥もその方向に慌てて視線を移すと


そこには、瑛太が立っていた。


「瑛太!」

遥が言うと、瑛太は彼女に視線をやり、そして頷いた。


「俺も腹減ったわ。
一緒に食べてええかな」

と、栄子に言った。

栄子は一瞬固まったが、すぐに気を取り直し

「あ、二人とも、ここに座って。」

と、早口で言った。


宏太も、顔は冷静でいたが、あたふたしながら

「ビール飲むか?」

と、遥と瑛太の二人に向かって上擦った声で聞いてきた。


その雰囲気を察知した遥は

「はい。いただきます。

瑛太も飲むよね?」

と、隣に腰掛けた瑛太に声をかけた。

瑛太は

「うん」

と、小さな声で返事した。


「お母さん、グラスを三つ持ってきて」

宏太が言うと、栄子も頷いて奥に消えていった。

遥はその様子を眺めていたが、栄子が涙を拭う姿が目に入り、思わずもらい泣きしそうになった。

そして、こんな自分でも役に立てる事があるのだと、しみじみ感じたのだった。


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