pretty preschool teacher

フロイライン

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smile

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「あ、こんばんは…」

ぎこちなく挨拶をした遥は、岩見の部屋に通された。

「あの、これ
何がいいかよくわからなかったので、適当に買ったんですけど」


「えーっ、すいません
今日買い物に行けてなくて、どうしようかと思ってたんです。
でも、助かりました。
お金、お支払いしますので」


「いえ、勝手にワタシが買ってきたんで…」

遥がそう言ったところで、隣の部屋から俊斗が出て来て、抱きついた。

「先生!」


「俊斗くん
もう元気になったの?」


「うん。もう平気!」

やはり、俊斗の甘えぶりは幼稚園の先生に対するそれではなく、母の面影を無意識に追っているのだと想像させた。


「おかげさまで昨日よりかなりマシなんです。
今日も一度嘔吐しましたが。

明日明後日は休ませて安静にしたら、明々後日は土曜日なので、月曜日から幼稚園に行けるようにさせます。」


「あまり無理はさせないで下さいね。

多分下痢もしてると思うんですけど、治るのに四日から一週間かかることもありますから。」


「はい。
よく見極めたいと思います。」


「でも、お仕事の方が忙しくて休めないんですよね?」


「ええ。
お恥ずかしい話ですが、私がいないと回らなくなるようなワンオペの会社なので。」


「そうなんですか…本当に大変ですね。

岩見さんも無理はなさらないようにしてくださいね。くれぐれも…」

「ありがとうございます。」


「もうご飯は食べられたんですか。」

「はい。シングルファーザーなので、手抜き料理なんですけど、早く作れるのだけが自慢で。」

岩見はそう言って笑った。


それからしばらくの間、俊斗と遊んだ遥だったが、歯磨きなどの寝る準備をさせた後、絵本の読み聞かせをして、上手く寝かしつけた。

俊斗は遥の袖口を掴んだまま寝たが、遥は微笑みながら、そっと布団の中にその小さな手をしまい込んだ。


「俊斗君、寝ました」

遥はそう言ってリビングに来ると、岩見は

「遥さん、本当にすみません」

と、申し訳なさそうに頭を下げた。


「今、お茶を淹れますんで、座ってて下さい。」

岩見はそう言うと、キッチンに入っていった。


「岩見さん、ホントにお構いなく…」

遥は、本来なら「ワタシ、もう帰りますので」というセリフを言うところだったが、何故か言葉を途切れさせた。

実のところ、俊斗が寝た後で岩見と話をしたいと思っており、そういうシチュエーションになった事で、高揚感をその身に感じていた。
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