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フロイライン

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告白

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俊斗が寝た事を確認すると、遥は小さな声で

「それでは、ワタシはこれで…」

と、言って立ち上がった。


「石川先生、こんな事までしていただいて、本当に申し訳ありません。」

岩見は深々と頭を下げて、謝意を示した。


「いえ、ワタシの方こそ図々しく家の中にまでお邪魔して、すみませんでした。」


遥もまた頭を下げた。


遥は玄関で靴を履くと、岩見の方を振り返り

「俊斗君が早く良くなることをお祈りしております。」

と言ったが、岩見は遥の言葉にリアクションを取れずに少し固まってしまった。
そして、ハッとしたような顔をした。

「あの、石川先生
ちょっと待って下さい。」


遥はドアの取っ手を持とうとしていたが、急に呼び止められた為、ビクッとなった。


「どうかされましたか?」


「石川先生…

この前、お話しした事なんですが」


「えっ…」


「石川先生…いや、遥さん

私はあなたの事が好きです。
お付き合いしていただけませんか」


あまりにもストレートな表現での告白だった。

遥もこの時点においては、はっきりと岩見に対する自分の恋心を自覚していた。

自覚していたからこそ、受け入れるわけにはいかなかった。


「岩見さん…
こんなことを言うのは何なんですが…


ワタシの事を好きだとおっしゃいましたが、それはワタシがあなたの亡くなられた奥様に似ているからで…」


「いえ、そんな事はありません。
たしかにあなたは私の妻にそっくりで、初めてお会いした時からそのように意識していた事は否めません。

しかし、あなたとこうして接してみて、あなたの外見だけではなく、内面にも惹かれていきました。
私は決して妻の影をあなたに追い求めているわけではないという事だけはわかって下さい。」


「それは…」


それくらいの事は遥にもよくわかっていた。
だが、女ではない自分がその想いを受け取る事は出来ないのだ。
しかし、女ではないという事は絶対に言えない…
故に、断りの言葉は自ずと限られてくるのだ。


だが、岩見の熱意はそんな事では折れる事なく、遥への思いをぶつけてきた。

時間にしてどれくらいだろうか…
実際には大した時間ではなかったが、遥にとってはとてつもなく長く感じた。

断りたい遥と諦めない岩見の話し合いは延々と続くかに思えたが、遥はもう隠しきれないと、ここにきて、ようやく諦めの境地に達したのだった。


「岩見さん
ワタシ、今まで秘密にしてきた事がありまして…」


「秘密?」


「はい。
ワタシ、女じゃないんです。」

唐突に放った遥の言葉に、岩見はその意味がわからず、キョトンとして言葉を発しなかった。
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