pretty preschool teacher

フロイライン

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二年半前

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リサが注射を打ち終わるのを病院の入口のところで待っていた遥は、リサが出て来ると、笑みを浮かべて手を挙げた。


「ごめん、遥ちゃん
お待たせ」

「待ってないよ

リサちゃん、いつものところに行く?」


二人は病院の入った雑居ビルを出てすぐのところにある
ファーストフード店に入り、ドリンクだけを注文した。

ここで長い時間話をするのが二人の恒例の行事になっていた。


「大学の方はどうなの?」


「うん、三年生になって益々忙しくなってきたわ。

ワタシ、本当に幼稚園の先生になれるのかなあ。」


「なれるわよ。
遥ちゃんにピッタリのお仕事だと思うわよ。」


「でも、ワタシって戸籍が男じゃない?

以前よりは随分マシにはなってきてるけど、ハードルが高くて」


「まあ、そうだけど…」


「リサちゃんは、良いとこ見つかった?」

遥の問いかけに、リサは力なく首を横に振った。


「色んな会社に履歴書送ったけど、面接まで辿り着ける事なんて全く無いわ」


「そうなんだ…」


「もう、諦めたわ」


「でも…」


「知り合いの人がお仕事紹介してくれてね、そこに行こうと思ってるのよ。」


「へえ

どんなお仕事?」


「風俗

ニューハーフヘルスってやつ」


「えっ、ちょ、ちょっと待って

それって、男の人の相手するって事?」

「うん、そうよ」


「でも、リサちゃん

男の人とした事あるの?」


「ないよ、そんなの。
もちろん女の子ともした事ないけど。」


「それはワタシもだけど…

未経験者が務まるお仕事なの?」


「まあ、研修もあるし、そこで色々学ばせてもらうわ。

何より、ワタシはお金をたくさん稼ぎたいの。

夢を叶えるにはお金が必要なの。」


「そうだね…

わかった。

リサちゃんの選択を応援するわ。

でも、ちょっとでもイヤだと感じたら辞めるんだよ。
いい?」


「うん、ありがとう

ホルモンしてから気持ちが堕ちる事が多くなったし、気をつけるわ。」


「ワタシも…

何か知らないけど、無性に悲しくて涙が止まらない事があるのよ。」


「お互い辛い事が多いと思うけど、何でも相談し合っていこうね。」


「うん。約束する」





リサは風俗嬢となり、遥は希望通り幼稚園教諭となった。

遥は、幼稚園に勤め出してから忙しくなってしまい、最近はリサと疎遠になってしまっていた。

リサも遥が多忙なのを察して、あまり連絡を取らなくなっていたのだが…

それが、今、会いたいというメールが遥の元に来た。


これはただ事ではない。

遥は悪い予感に包まれながら、待ち合わせ場所に急いで向かっていた。
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