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Lesson12

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「西川課長、まだ良くならないんですか。」

優斗は、二人で得意先回りをしている時、香菜子に尋ねた。

「うん。
来週、手術しなきゃならないみたいなの。

ちょっと長引くわね。」


「そうっすか。」


「仕事については、私が共有できてるから大丈夫。

復帰するまでみんなでフォローするしかないわね。」


「ですね。

俺も役に立たないっすけど、何でもやりますんで遠慮なく命令して下さい。」


「ありがとう。」


「部長」


「今日もまた会社に戻って残業っすか?」


「ん?

あー、もう五時過ぎてるのかあ」

香菜子は時計を見て言った。

「今日は俺も手伝いますので。

一緒に会社に戻ります。」


「そんなの大丈夫よ、ホントに。

昨日である程度目処がついたから。
私も今日は直帰する事にするわ。」


「えっ、ホントに?

それなら良かったです。」


優斗は、そう言うと、香菜子を見つめて笑みを浮かべた。

その表情を見て、香菜子はハッとした。

優斗の笑った顔が、驚くほど可愛かったからだ。


こんな笑顔、久しく見ていなかった。
年齢を重ねれば重ねるほどに、こんな屈託のない笑顔を見せる事など出来なくなる。

やはり、若さゆえの純粋さか…

少なくとも、自分はこんな笑顔になれはしない。


そんな事が香菜子の頭の中を巡り、変な間が出来てしまった。


「どうしたんですか、部長」


「ん?

あ、いや、何でもないわ。」

すかさず聞く優斗に、香菜子はぎこちなくそう答えた。


「それより、新開君
今日って予定ある?」


「えっ、退勤後ですか?」


「そう。」


「別に何もないですよ。」


「よかったら、ご飯でも食べてく?」


香菜子は、思い切って優斗を誘ってみた。

この世代の若者は、仕事を終えてまで上司と一緒にはいたくない。
飲みに行くのもハッキリと断ると言われている。

典型的な今どきの若者である優斗も、まさにそっち系の人間であろう。

フツーなら断ってくるに違いない。
そう考えられなくもなかったが、香菜子には漠然とした自信が少しだけあった。

しばらく一緒に仕事をしてみて、優斗の人となりが何となくわかったからだった。

優斗は見かけによらず、真面目なところがあり、また自分のような年長者をちゃんと立ててくれる。

だからこそ、誘う事が出来たのだった。

そして、優斗も

「行きます。
是非」

と、期待していた答えをくれた。
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