529 / 722
産後鬱
しおりを挟む
翌日、智は美智香の自宅を訪れていた。
「智弥~っ」
智は甥っ子の名前を呼んで、その可愛さに感動した。
「お姉ちゃんにも似てるし、目元は真弥クン似でもあるよねー」
「そう?
私にはそんなに似てないと思うけど。
でも、真弥君に似て、イケメンでホントによかったわ」
美智香もまた、我が子の顔を覗き込みながら笑って言った。
「子供が出来ても、真弥クンにメロメロなんだね、お姉ちゃん。」
「当たり前よ。
そんな事で気持ちが変わるわけないわ。」
「へえ、そうなんだ。
だいたいの夫婦は、そうじゃないらしいけどね。」
「ウチは大丈夫よ。
真弥クンは、智弥には勿論そうだけど、私にもちゃんと愛情を注いでくれるもの。
それがわかるもの。」
「お姉ちゃんが幸せそうでよかったわ。
産後の状況があまり良くないって聞いてたから、心配してたのよ。」
「体調はたしかに良くないわ。
貧血とかお腹が痛かったりもするけど、耐えられないほどじゃないから大丈夫よ」
「さすがに強いわね、お姉ちゃん」
「まあ、あの男からこの生活を守らなきゃって、あのときに強く思って、そして心に誓ったからね。」
美智香は、達也と桐山による悪質な事件を思い出しながら、強い口調で智に言った。
「そうだね…」
「あ、智
裁判に出て証言してくれたんだね。」
「えっ」
「真弥君から聞いたわ。」
「あ、そうなんだ。
お姉ちゃんは妊娠してるし、一番大事な時だから知らせないでおこうって…
でも、アイツらを一日でも長く刑務所に入れたいから…その一心でね。」
「ありがとう、智」
「でも、桐山はともかく、達也は前科もなく初犯だったし、仕事で大手量販との契約を失い、追い詰められた事により衝動的に行なったものだって、向こうの弁護士が主張して…
思ってたより、罪が軽かったの。
主犯でもなかったし…」
「そうだね。
でも、私はもう心配はしてないのよ。
あの男は甘やかされて育ってきたし、これからの人生で、逆境に耐えていけるようなタマじゃないわ。
刑期を終えて出てきても、多分何かする気力は残ってないと思う。
再起することも、また私に嫌がらせをする事もね。」
「だと、いいんだけど…」
「それより、智の方はどうなの?
お店の方は上手くいってるの?」
「うん。おかげさまで。
いつも満員で、ある程度軌道に乗った感はある。
前の旦那さんの再婚相手の由香里さんて人がいるんだけど
由香里さんの連れ子の恵ちゃんて子を、今ウチに住ませて一緒に働いてもらってるの。」
「えっ、何それ」
「色々あってね。
その恵ちゃんて子もニューハーフ志望で、ワタシを頼って東京に出てきたのよ。」
智は、そう言って笑った。
「智弥~っ」
智は甥っ子の名前を呼んで、その可愛さに感動した。
「お姉ちゃんにも似てるし、目元は真弥クン似でもあるよねー」
「そう?
私にはそんなに似てないと思うけど。
でも、真弥君に似て、イケメンでホントによかったわ」
美智香もまた、我が子の顔を覗き込みながら笑って言った。
「子供が出来ても、真弥クンにメロメロなんだね、お姉ちゃん。」
「当たり前よ。
そんな事で気持ちが変わるわけないわ。」
「へえ、そうなんだ。
だいたいの夫婦は、そうじゃないらしいけどね。」
「ウチは大丈夫よ。
真弥クンは、智弥には勿論そうだけど、私にもちゃんと愛情を注いでくれるもの。
それがわかるもの。」
「お姉ちゃんが幸せそうでよかったわ。
産後の状況があまり良くないって聞いてたから、心配してたのよ。」
「体調はたしかに良くないわ。
貧血とかお腹が痛かったりもするけど、耐えられないほどじゃないから大丈夫よ」
「さすがに強いわね、お姉ちゃん」
「まあ、あの男からこの生活を守らなきゃって、あのときに強く思って、そして心に誓ったからね。」
美智香は、達也と桐山による悪質な事件を思い出しながら、強い口調で智に言った。
「そうだね…」
「あ、智
裁判に出て証言してくれたんだね。」
「えっ」
「真弥君から聞いたわ。」
「あ、そうなんだ。
お姉ちゃんは妊娠してるし、一番大事な時だから知らせないでおこうって…
でも、アイツらを一日でも長く刑務所に入れたいから…その一心でね。」
「ありがとう、智」
「でも、桐山はともかく、達也は前科もなく初犯だったし、仕事で大手量販との契約を失い、追い詰められた事により衝動的に行なったものだって、向こうの弁護士が主張して…
思ってたより、罪が軽かったの。
主犯でもなかったし…」
「そうだね。
でも、私はもう心配はしてないのよ。
あの男は甘やかされて育ってきたし、これからの人生で、逆境に耐えていけるようなタマじゃないわ。
刑期を終えて出てきても、多分何かする気力は残ってないと思う。
再起することも、また私に嫌がらせをする事もね。」
「だと、いいんだけど…」
「それより、智の方はどうなの?
お店の方は上手くいってるの?」
「うん。おかげさまで。
いつも満員で、ある程度軌道に乗った感はある。
前の旦那さんの再婚相手の由香里さんて人がいるんだけど
由香里さんの連れ子の恵ちゃんて子を、今ウチに住ませて一緒に働いてもらってるの。」
「えっ、何それ」
「色々あってね。
その恵ちゃんて子もニューハーフ志望で、ワタシを頼って東京に出てきたのよ。」
智は、そう言って笑った。
3
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる