487 / 710
bond
しおりを挟む
「ねえ、あっちゃん
明日、莉愛ちゃんがここに来るって連絡が入ったの。」
由香里は、敦が待つベッドに入ると、智から入ったLINEの画面を見せた。
「えっ、莉愛が?」
「何か、私物を取りに来たいからって。」
「私物?
そんなもの置いてたっけ?
まあ、いいか。
それよりも…大丈夫?
由香里ちゃん」
敦は少し遠慮気味に言った。
「えっ、ひょっとして前妻の娘さんの莉愛ちゃんがここに来るのを私が嫌がるって思ってる?
あっちゃん、そんなのいいに決まってるじゃない。
私だって莉愛ちゃんの事は今でも家族のように思ってるのよ。」
「うん、ごめん。
そう言ってもらえると、僕もすごく嬉しいよ。
ところで何時に駅に着くって?」
「夕方の四時過ぎだって。」
「じゃあ、迎えに行かないとな」
「あっちゃん、私が行くわよ。」
「あ、うん。
ありがとう。」
「恵太も喜ぶしね。」
「まあ、色々あったけど、こうして由香里ちゃんと恵太君と幸せに暮らせているし、僕は本当に幸せ者だよ。」
「うん。
私もよ…
私、智さんの事が大好きなのよ。
あっちゃんと別れたのだって、決して嫌いになったんでもこの生活がイヤになったんでもないと思うのね。
みんなが幸せに生きる事を念頭に、敢えて自分を殺して、今の形を作ってくれたのよ。」
「それは、僕も思うけど…」
「けど?」
「誤解を恐れずに言うと、僕が本当に求めていたものは、フツーなんだよ。
たしかにトモの事はすごく好きだったし、一緒にいて楽しくもあった。
でも、平凡な家庭で育ち、平凡な小学校の教員だった僕は、トモと付き合い、一緒になって、幸せではあったけど、フツーではなかった。
トモがニューハーフだったっていうことは、小さな事ではないが、そこまで気にはしていなかった。
でも、やはりフツーの生活っていうのは難しかったんだよね。
農業も上手くいかず、母も病気になって、僕は心の底にしまっていた疑問のような、不満のような、上手く言葉で説明できないけど、そのような感情が時折湧いてくるようになっていたんだ。
そして、キミに出会った。
キミはすごく美しくて優しくて、魅力的な女性だったが、それでいてフツーの女性だった。
僕はそんなキミに心を奪われてしまった。
だから、トモが身を引かなくても、早晩このような事になっていたと思うよ。」
敦は日頃から思っている事を、由香里に言葉で伝えた。
「あっちゃん…愛してる」
由香里は瞳を潤ませ、敦の胸に顔を埋めた。
明日、莉愛ちゃんがここに来るって連絡が入ったの。」
由香里は、敦が待つベッドに入ると、智から入ったLINEの画面を見せた。
「えっ、莉愛が?」
「何か、私物を取りに来たいからって。」
「私物?
そんなもの置いてたっけ?
まあ、いいか。
それよりも…大丈夫?
由香里ちゃん」
敦は少し遠慮気味に言った。
「えっ、ひょっとして前妻の娘さんの莉愛ちゃんがここに来るのを私が嫌がるって思ってる?
あっちゃん、そんなのいいに決まってるじゃない。
私だって莉愛ちゃんの事は今でも家族のように思ってるのよ。」
「うん、ごめん。
そう言ってもらえると、僕もすごく嬉しいよ。
ところで何時に駅に着くって?」
「夕方の四時過ぎだって。」
「じゃあ、迎えに行かないとな」
「あっちゃん、私が行くわよ。」
「あ、うん。
ありがとう。」
「恵太も喜ぶしね。」
「まあ、色々あったけど、こうして由香里ちゃんと恵太君と幸せに暮らせているし、僕は本当に幸せ者だよ。」
「うん。
私もよ…
私、智さんの事が大好きなのよ。
あっちゃんと別れたのだって、決して嫌いになったんでもこの生活がイヤになったんでもないと思うのね。
みんなが幸せに生きる事を念頭に、敢えて自分を殺して、今の形を作ってくれたのよ。」
「それは、僕も思うけど…」
「けど?」
「誤解を恐れずに言うと、僕が本当に求めていたものは、フツーなんだよ。
たしかにトモの事はすごく好きだったし、一緒にいて楽しくもあった。
でも、平凡な家庭で育ち、平凡な小学校の教員だった僕は、トモと付き合い、一緒になって、幸せではあったけど、フツーではなかった。
トモがニューハーフだったっていうことは、小さな事ではないが、そこまで気にはしていなかった。
でも、やはりフツーの生活っていうのは難しかったんだよね。
農業も上手くいかず、母も病気になって、僕は心の底にしまっていた疑問のような、不満のような、上手く言葉で説明できないけど、そのような感情が時折湧いてくるようになっていたんだ。
そして、キミに出会った。
キミはすごく美しくて優しくて、魅力的な女性だったが、それでいてフツーの女性だった。
僕はそんなキミに心を奪われてしまった。
だから、トモが身を引かなくても、早晩このような事になっていたと思うよ。」
敦は日頃から思っている事を、由香里に言葉で伝えた。
「あっちゃん…愛してる」
由香里は瞳を潤ませ、敦の胸に顔を埋めた。
3
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる