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事前交渉
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「美智香さん、智さん。
お二人の意見は食い違っているようですし、それに、私がいては話しにくい事もあるでしょう。
三十分のお時間を差し上げます。
どのような選択をされるかはあなた方次第です。」
「選択?」
「三十分以内に私が佐藤さんに連絡を入れない場合、交渉不成立と見做し、佐藤さんが自動的にご主人を傷つけてしまうことになります。
また、警察に連絡されたと判断したときも同様です。」
「ふざけないで!
そんな事をしたら、あなた達は破滅よ
それでもいいの?」
智は怒りに満ちた表情だったが、その口調は極めて冷静だった。
「どちらにしても、佐藤さんはもう詰んでるんですよ。
どう足掻いても会社は程なくして潰れるでしょう。」
「だったら、尚更…」
美智香が言うと、桐山は笑みを浮かべて首を横に振った。
「美智香さん、先ほども申し上げたが、あなたも佐藤さんの性格はよくご存知の筈だ。」
「性格?」
「ええ。
子供の頃から学校の成績だけは良く、親から甘やかされて育ったせいか、選民意識が驚くほど強い。
しかし、自ら会社経営をして、道を切り開いていくタイプでは決してない。
与えられたレールの上を進む事は出来てもね。
だから、美智香さんと一緒に会社を経営しているときは良かったが、あなたが去ってしまい、一人で舵取りをしなければならなくなったときに、その弱点が露呈したんです。」
「何が言いたいの?」
「佐藤さんもその辺りの事をようやく気づかれましてね。
あなたを躍起になって取り戻そうとしました。
それも、あなたの為だとか綺麗事を言ってね。
あれはあなたに向けた言葉じゃない。自分にそう言い聞かせ、そう思い込ませる為に言った言葉なんですよ。」
「だから、それが何?」
「佐藤さんは、もはや会社どうのこうのは思っていないという事ですよ。
もうどうにもならないと判断しているのですから。
今はあなたを道連れにして破滅したいと考えています。
幸せな暮らしを送るあなたを潰す事を第一に。」
「そんな…逆恨みも甚だしいじゃないの!
こっちがあの男に酷い目に遭わされたんだがら。」
「ですが、私は違います。
佐藤さんに融資していますから、どうしても回収しないといけない。
だから、あなたとこうしてお話をさせていただいてるんです。」
「詰んでるとわかってて私に借金を肩代わりしろと?」
「そうです。
もし、あなたが承諾してくれるなら、私は佐藤さんを説得し、旦那さんを無事解放する事をお約束します。」
「そんなバカな話!」
横で聞いていた智が激高して口を挟んだ。
だが、桐山は動じる事なく、不適な笑みを見せるだけだった。
お二人の意見は食い違っているようですし、それに、私がいては話しにくい事もあるでしょう。
三十分のお時間を差し上げます。
どのような選択をされるかはあなた方次第です。」
「選択?」
「三十分以内に私が佐藤さんに連絡を入れない場合、交渉不成立と見做し、佐藤さんが自動的にご主人を傷つけてしまうことになります。
また、警察に連絡されたと判断したときも同様です。」
「ふざけないで!
そんな事をしたら、あなた達は破滅よ
それでもいいの?」
智は怒りに満ちた表情だったが、その口調は極めて冷静だった。
「どちらにしても、佐藤さんはもう詰んでるんですよ。
どう足掻いても会社は程なくして潰れるでしょう。」
「だったら、尚更…」
美智香が言うと、桐山は笑みを浮かべて首を横に振った。
「美智香さん、先ほども申し上げたが、あなたも佐藤さんの性格はよくご存知の筈だ。」
「性格?」
「ええ。
子供の頃から学校の成績だけは良く、親から甘やかされて育ったせいか、選民意識が驚くほど強い。
しかし、自ら会社経営をして、道を切り開いていくタイプでは決してない。
与えられたレールの上を進む事は出来てもね。
だから、美智香さんと一緒に会社を経営しているときは良かったが、あなたが去ってしまい、一人で舵取りをしなければならなくなったときに、その弱点が露呈したんです。」
「何が言いたいの?」
「佐藤さんもその辺りの事をようやく気づかれましてね。
あなたを躍起になって取り戻そうとしました。
それも、あなたの為だとか綺麗事を言ってね。
あれはあなたに向けた言葉じゃない。自分にそう言い聞かせ、そう思い込ませる為に言った言葉なんですよ。」
「だから、それが何?」
「佐藤さんは、もはや会社どうのこうのは思っていないという事ですよ。
もうどうにもならないと判断しているのですから。
今はあなたを道連れにして破滅したいと考えています。
幸せな暮らしを送るあなたを潰す事を第一に。」
「そんな…逆恨みも甚だしいじゃないの!
こっちがあの男に酷い目に遭わされたんだがら。」
「ですが、私は違います。
佐藤さんに融資していますから、どうしても回収しないといけない。
だから、あなたとこうしてお話をさせていただいてるんです。」
「詰んでるとわかってて私に借金を肩代わりしろと?」
「そうです。
もし、あなたが承諾してくれるなら、私は佐藤さんを説得し、旦那さんを無事解放する事をお約束します。」
「そんなバカな話!」
横で聞いていた智が激高して口を挟んだ。
だが、桐山は動じる事なく、不適な笑みを見せるだけだった。
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