カジュアルセックスチェンジ

継承

「トモちゃん、あなた
ワタシの店を引き継ぎなさい。これは命令よ」

「えっ」

「土地も全てワタシのものだし、最初は売ろうと考えたけど、もうワタシも先が長くないこともわかったし、お金なんて必要ないし。
タダであなたに譲るわ。

あの店には愛着があってね。
誰かにスマイキーを引き継いでもらえるならそれに越した事はないのよ。」


突然の提案に、智は困った表情を浮かべた。


「でも…ワタシ、バーとかで働いた経験なんてないし、どうやっていいかなんてわかんないです。」


「それは心配ないわ。

この暇な入院生活中に、お店の全てを網羅した虎の巻を完成させたのよ。」

ママはそう言うと、テレビ台の下の棚から分厚いノートを出してきた。

ケイコと智はそれを受け取り、中を確認すると、細かい字で全ページが埋められていた。


「仕入れ先からお得意様の一覧まで全部書いてあるわ。
それさえ読めば今日からだって働けるわよ。」

ママは智を見つめて言った。


「ケイコさん…」


智は困ってケイコに助け舟を求めたが、ケイコも


「良いお話じゃない？

真剣に考えてみたら」

と言った。


「トモちゃん、こっちで仕事探して見つからなかったら風俗で世話になればいいって思ってるんなら、悪い事は言わないわ。

うちの店を引き継ぎなさい。」


「ママ…


わかりました。

でも、ワタシはママが復帰されるまでの繋ぎ役をさせていただきます。
それでも良いのなら、このお話をお受け致します。」



「トモちゃん

アンタ、相変わらず優しいわね。

うん…トモちゃんの優しさに報いるためにワタシ、頑張って生きてみせるからね」

ママが言うと、智は顔を両手で押さえ、肩を震わせて泣いた。


「コラコラ、泣くな

ワタシはまだ死んでないぞ」


「ごめんなさい

女性ホルモンの影響ですぐ泣いちゃうって事にしといて下さい。」


智は顔をくしゃくしゃにしてママに言った。