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痴態空missile
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莉愛も隣の部屋に両親がいる事は十分に認識していた。
どれくらいの声を出せば聞こえるのかも。
しかし、性に対する免疫がほぼ無かった莉愛は、自分で自分を制御する事が出来ず、そんな事はお構いなしに大きな喘ぎ声を出し、智と敦はおろか、下の部屋にいた由香里にまで知られるところとなった。
翌日の朝食はたまたま五人が一堂に介し、それぞれが気まずい雰囲気を醸し出した。
「莉愛ちゃん、牛乳飲む?」
「うん」
しかし、智はいつもと変わらない態度で莉愛に接し、莉愛もまた普通に答えた。
由香里と恵太、敦はどことなくぎこちなく、心ここに在らずという雰囲気を醸し出していた。
敦は早々と食事を済ませて、この悪い空気の中からいち早く脱出し、残りは智莉愛親子と由香里恵太親子の四人がテーブルに残された。
ここで、由香里がたまらず口を開いた。
「智さん、莉愛ちゃん…」
「どうしたんですか、由香里さん」
莉愛は食べるのをやめて由香里を見て言った。
「さっき、恵太から聞きました。
恵太が莉愛ちゃんにとんでもない事を…」
恵太は俯いたまま、固まっている。
智も何か話しかけたかったが、言葉が出てこない様子だ。
だが、莉愛は落ち着いた表情で
「それは、恵太と私が納得してした事ですから。
気になさらないでください。」
と、淡々とした口調で言った。
「えっ、でも…」
「そうだよね?恵太」
戸惑う由香里を他所に、莉愛は恵太に聞いた。
恵太は、びっくりして顔を上げたが、すぐに莉愛から視線を切り、また俯いたまま
「うん…」
と、答えた。
「というわけなので、大丈夫ですから」
莉愛はそう言うと、また食べ始めた。
しばらくして、朝食を食べ終えると、莉愛は恵太を連れて外に出ていった。
何も言葉を発せなかった智と、針の筵の由香里だけが食卓に取り残されたのだ。
「智さん…
私たち親子は、災いばかりをもたらす悪魔のような存在です。
やはり、ここにいてはいけなかったんです。
本当に申し訳ございません…
恵太を連れて出て行きます」
「由香里さん
昨日の夜、あの部屋で何があったかは、想像するに難くありません。
親としてはショックですし、十六歳といえば、まだ子供だといえます
一方で、莉愛も恵ちゃんもその辺の分別はつく年ごろとも言えますし、ワタシとしては、そこをとやかく言うのはやめておこうと思っています。
もちろん、本人が直接相談してきたのなら、親身になって聞いてアドバイスもしますが。」
「…」
そうは言ったものの、智は後悔していた。
恵太に対して抱いていたぼんやりとした違和感の正体が、今になってわかったのだ。
智もニューハーフとしてはかなり異色の存在だったが、恵太にはそのどれにも通じない何かを感じていた。
この世界は多種多様であり、肉体を女性化させたい者、異性粧で満足する者、男性のままで男性を愛す者など様々なのだ。
だが、恵太の場合、生まれながらにして自分の性に違和感を持ち、将来的に性転換して女性を目指していると公言しており、それに関しては間違いないところだろう。
しかし、そういった者は自分の男性器が嫌で、中には目にするのもイヤだと言う者もいる。
恵太は、普通で考えればこの部類に属するはずだが、その実は違っており、女性が好きな異性愛者であった。
しかも、自らの男性器を嫌悪していない…
これが智が最初から感じていた違和感だった。
だが、今となっては時すでに遅し…
古い言い方をするなら、莉愛を傷物にされてしまった後だったのである
どれくらいの声を出せば聞こえるのかも。
しかし、性に対する免疫がほぼ無かった莉愛は、自分で自分を制御する事が出来ず、そんな事はお構いなしに大きな喘ぎ声を出し、智と敦はおろか、下の部屋にいた由香里にまで知られるところとなった。
翌日の朝食はたまたま五人が一堂に介し、それぞれが気まずい雰囲気を醸し出した。
「莉愛ちゃん、牛乳飲む?」
「うん」
しかし、智はいつもと変わらない態度で莉愛に接し、莉愛もまた普通に答えた。
由香里と恵太、敦はどことなくぎこちなく、心ここに在らずという雰囲気を醸し出していた。
敦は早々と食事を済ませて、この悪い空気の中からいち早く脱出し、残りは智莉愛親子と由香里恵太親子の四人がテーブルに残された。
ここで、由香里がたまらず口を開いた。
「智さん、莉愛ちゃん…」
「どうしたんですか、由香里さん」
莉愛は食べるのをやめて由香里を見て言った。
「さっき、恵太から聞きました。
恵太が莉愛ちゃんにとんでもない事を…」
恵太は俯いたまま、固まっている。
智も何か話しかけたかったが、言葉が出てこない様子だ。
だが、莉愛は落ち着いた表情で
「それは、恵太と私が納得してした事ですから。
気になさらないでください。」
と、淡々とした口調で言った。
「えっ、でも…」
「そうだよね?恵太」
戸惑う由香里を他所に、莉愛は恵太に聞いた。
恵太は、びっくりして顔を上げたが、すぐに莉愛から視線を切り、また俯いたまま
「うん…」
と、答えた。
「というわけなので、大丈夫ですから」
莉愛はそう言うと、また食べ始めた。
しばらくして、朝食を食べ終えると、莉愛は恵太を連れて外に出ていった。
何も言葉を発せなかった智と、針の筵の由香里だけが食卓に取り残されたのだ。
「智さん…
私たち親子は、災いばかりをもたらす悪魔のような存在です。
やはり、ここにいてはいけなかったんです。
本当に申し訳ございません…
恵太を連れて出て行きます」
「由香里さん
昨日の夜、あの部屋で何があったかは、想像するに難くありません。
親としてはショックですし、十六歳といえば、まだ子供だといえます
一方で、莉愛も恵ちゃんもその辺の分別はつく年ごろとも言えますし、ワタシとしては、そこをとやかく言うのはやめておこうと思っています。
もちろん、本人が直接相談してきたのなら、親身になって聞いてアドバイスもしますが。」
「…」
そうは言ったものの、智は後悔していた。
恵太に対して抱いていたぼんやりとした違和感の正体が、今になってわかったのだ。
智もニューハーフとしてはかなり異色の存在だったが、恵太にはそのどれにも通じない何かを感じていた。
この世界は多種多様であり、肉体を女性化させたい者、異性粧で満足する者、男性のままで男性を愛す者など様々なのだ。
だが、恵太の場合、生まれながらにして自分の性に違和感を持ち、将来的に性転換して女性を目指していると公言しており、それに関しては間違いないところだろう。
しかし、そういった者は自分の男性器が嫌で、中には目にするのもイヤだと言う者もいる。
恵太は、普通で考えればこの部類に属するはずだが、その実は違っており、女性が好きな異性愛者であった。
しかも、自らの男性器を嫌悪していない…
これが智が最初から感じていた違和感だった。
だが、今となっては時すでに遅し…
古い言い方をするなら、莉愛を傷物にされてしまった後だったのである
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