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瓢箪からLOVE

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しばらく歩くと、美沙は萩原から手を離し、少し間隔を取って歩いた。

「ごめんね。なんかはしゃぎすぎちゃって」

さっきとは打って変わって、少しトーンを落とし気味に話す美沙に、萩原は

「いえ、美沙さん
僕はすごく楽しかったですよ」

と、笑みをこぼして言った。

街灯に照らされた萩原の表情があまりにも美しく、美沙は一瞬固まってしまい、慌てて目を逸らした。


「真弥クンもそうだけど、最近の若いコはオバサンの扱いが上手いわね。」

美沙が笑うと、萩原は真顔で

「いえ、美沙さんは本当に素敵です」 

と、言った。


「もう、そんな事言われたら、オバサン本気にしちゃって、その気になっちゃうよ。」


「僕は本気で言ってます」


「えっ」


「美沙さん、また会ってもらえますか」


「えっ、なんで?」


「あなたの事が素敵だと思ったからです。
また二人でお会いしたいです」


萩原は真っ直ぐな目で美沙に言った。

美沙はいつもの軽い感じの返しをしようと思ったが、出来ずに固まってしまい、何も言えなくなった。


それから二人は無言で歩き、交差点まで来たところで、それぞれが違う方向に別れる事になった。

美沙は残念な気持ちと安堵の気持ちが半々となり、複雑な気分で萩原に言った。

「それじゃあ、私はこっちだから。
今日は若いコと飲めて楽しかった
ありがとうね」

と、手を振って去ろうとした。

だが


「美沙さん
僕がさっき言った事はマジなんで

LINE送りますんで、よかったら美沙さんも下さい。

今日は美沙さんに出会えて本当によかったです。
ありがとうございました」

と、頭を下げて言った。

美沙は引き攣った笑みを浮かべているという自覚を持ちながら、笑みを浮かべ、無言で信号を渡っていった。


萩原はその場で美沙を見送っていたが、美沙は振り返らずに、そのままうつむき加減で早足で歩いて、萩原の視界から消えた。



(ちょっと、何よ、コレ)

美沙は半分怒り気味で、ため息をついた。
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