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莉愛が寮に戻った翌日の午後、境親子が家にやってきた。
由香里と恵太は、せっせと荷物を運び込み、夕方にようやく引越しが完了した。
「トモさん。
これからしばらくの間、ご迷惑をおかけしますが、どうか宜しくお願いします。」
晩御飯の前に由香里と恵太は深々と畳に手を付いて頭を下げた。
「そんな畏まらないで下さいね。
こちらこそ、明日から畑仕事をお手伝いいただくので、本当に申し訳ないんですが、宜しくお願い致します。」
「あの、ご主人さまは?」
「今日は戻れないって言ってたんで、病院に泊まり込むようです。」
「そうなんですね。
ご挨拶がしたかったんですが」
「そんなの気にしないで下さい。
明日は帰ってくると思います。
でも、主人はそんな気を遣うようなタイプじゃないので、すぐに打ち解けられると思いますよ」
智はそう言って笑った。
その後も、智と境親子は様々な話をして、徐々に打ち解けていった。
由香里は少し化粧が厚めで髪の色もかなり明るめであったが、肌質もよく、まあ美人の類に入るルックスをしていたので、智は思い切って年齢を聞いた。
由香里の年齢は三十九であった。
「あ、同い年だ」
智が言うと、由香里は驚いた様子で
「えっ、本当!?
なんか嬉しい」
と、喜んだ。
恵太も負けじと二人の話に割って入ってきて、智に質問したり、褒めたりした。
「莉愛ちゃんも美人でめちゃくちゃ可愛いって思ってたけど、やっぱりこうやって見ると、トモさん似なんですねー」
「親バカなんですけど、莉愛は美人だと思います。
母親よりワタシに似てるとは思いますけど、似てるというだけで、それでワタシが美人だとは思いません」
「いえ、トモさんはめちゃくちゃ美人です。
こんなに美しい人、見た事がありません」
「恵ちゃん、それは言い過ぎよ
もっと世間に出て、よく周りを見てきて。
ワタシが美人じゃなくて、本物の美人が沢山いる事がわかるから。」
「いえ、トモさんがニューハーフだから言ってるわけじゃなくて、女性の中にいても、レベチです。
ハッキリ言って。」
「由香里さん、褒め殺し?」
智は笑いながら、由香里に助けを求めたが
「いえ、私もそう思いますよ。」
由香里も息子に同調した。
仕方なく、智は話題を変えた。
「あ、もうこんな時間…
明日から朝も早いので、先にどちらからかお風呂に入って下さいね。
もう沸いてますので。」
「いえ、そんなのダメです。
私も恵太も居候なんですから。
先ずは智さんが入って下さい。」
由香里は智の申し出を固辞したので、智は恵太に振った。
「じゃあ、恵ちゃん、先に入る?」
すると、恵太はとんでもないことを言い出した。
由香里と恵太は、せっせと荷物を運び込み、夕方にようやく引越しが完了した。
「トモさん。
これからしばらくの間、ご迷惑をおかけしますが、どうか宜しくお願いします。」
晩御飯の前に由香里と恵太は深々と畳に手を付いて頭を下げた。
「そんな畏まらないで下さいね。
こちらこそ、明日から畑仕事をお手伝いいただくので、本当に申し訳ないんですが、宜しくお願い致します。」
「あの、ご主人さまは?」
「今日は戻れないって言ってたんで、病院に泊まり込むようです。」
「そうなんですね。
ご挨拶がしたかったんですが」
「そんなの気にしないで下さい。
明日は帰ってくると思います。
でも、主人はそんな気を遣うようなタイプじゃないので、すぐに打ち解けられると思いますよ」
智はそう言って笑った。
その後も、智と境親子は様々な話をして、徐々に打ち解けていった。
由香里は少し化粧が厚めで髪の色もかなり明るめであったが、肌質もよく、まあ美人の類に入るルックスをしていたので、智は思い切って年齢を聞いた。
由香里の年齢は三十九であった。
「あ、同い年だ」
智が言うと、由香里は驚いた様子で
「えっ、本当!?
なんか嬉しい」
と、喜んだ。
恵太も負けじと二人の話に割って入ってきて、智に質問したり、褒めたりした。
「莉愛ちゃんも美人でめちゃくちゃ可愛いって思ってたけど、やっぱりこうやって見ると、トモさん似なんですねー」
「親バカなんですけど、莉愛は美人だと思います。
母親よりワタシに似てるとは思いますけど、似てるというだけで、それでワタシが美人だとは思いません」
「いえ、トモさんはめちゃくちゃ美人です。
こんなに美しい人、見た事がありません」
「恵ちゃん、それは言い過ぎよ
もっと世間に出て、よく周りを見てきて。
ワタシが美人じゃなくて、本物の美人が沢山いる事がわかるから。」
「いえ、トモさんがニューハーフだから言ってるわけじゃなくて、女性の中にいても、レベチです。
ハッキリ言って。」
「由香里さん、褒め殺し?」
智は笑いながら、由香里に助けを求めたが
「いえ、私もそう思いますよ。」
由香里も息子に同調した。
仕方なく、智は話題を変えた。
「あ、もうこんな時間…
明日から朝も早いので、先にどちらからかお風呂に入って下さいね。
もう沸いてますので。」
「いえ、そんなのダメです。
私も恵太も居候なんですから。
先ずは智さんが入って下さい。」
由香里は智の申し出を固辞したので、智は恵太に振った。
「じゃあ、恵ちゃん、先に入る?」
すると、恵太はとんでもないことを言い出した。
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