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美智香の働くスーパー「トクヤマ」は、レギンドーの傘下となった為、レギンドーの一店舗として生まれ変わる事になった。
そのための店舗改装が入るため、美智香らパート従業員は、四日間の休みとなり、その後店の開店準備のための陳列、新しいレジやシステム変更に対する説明会などを店内で行った。
レギンドーの東日本本部からも社員が派遣され、美智香等もその指導を受けた。
「みなさん、おはようございます。
東日本本部から来た後藤と申します。
明日、いよいよレギンドー西公園店としてオープンするわけですが、システム等の変更など、細かい変更がある以外は、基本何も変わりません。
お客様に喜んでもらえる店舗を目指す
それさえ皆さんが認識していただいていれば、敢えてこちらから言う事はありません。
みんなで一丸になって頑張っていきましょう」
「はい」
美智香も皆にも混じって元気よく返事をした。
後藤は新店舗が出来ると数日間指導に来るスーパーバイザー的なポジションにいる人物らしく、新店ラッシュのレギンドーにあって、大変忙しくしているという話だった。
年齢は美智香より少し若い…四十歳くらいと見受けられた。
日本最大手のスーパーの社員らしく、身なりもきっちりしていて、トクヤマにいた男性社員達とは雰囲気からして違った。
元会社経営、そしてバリキャリの美智香から見ても、この男はなかなか仕事が出来るのでは?と一瞬思わせた。
ただ、特段この男がすごいという感じではなく、数々のやり手と遭遇してきた美智香としては、既視感があるというか、平均より少し上という判断をした。
あくまでもトクヤマ社員と比べて、という事で。
後藤は美智香も含めて、全ての従業員にレギンドーのシステムなどを丁寧に教えてくれて、わかりやすかった。
午後四時
一部のパートが上がる時間となり、美智香も皆に挨拶をしてバックヤードに下がった。
更衣室でさっと着替え、美智香は夕飯の支度をすべく、早足で店通口を出た。
すると、背後から
「佐々木さん」
と、いう声が聞こえてきた。
美智香が振り返ると、後ろから後藤も出てきた。
「あ、お疲れ様です。」
一パート従業員の名前を既に頭に入れているとは…
この男なかなかやる…
と、思いながら美智香は軽く会釈した。
そして、その場から去ろうと思ったが、後藤は引き留めるように言葉を発した。
「佐々木さん、あの
間違ってたらすいません、どこかでお会いした事ありませんか?」
予想だにしない方向からの言葉だった。
ナンパ?
いや、こんなパートのおばちゃんにわざわざ声をかけるほどの好きものでもなかろう
美智香は考えを巡らせたが思い浮かばず、しかし
後藤に感じた既視感は、どこかで会った事があるから?
と、いう疑問が湧いて来た。
「ひょっとして、トモ…
いや、吉岡智さんのお姉さんですか?」
「えっ」
一瞬にして美智香の後藤に対する既視感の答えが出た。
そうだ
この男は、智と付き合っていた後藤和俊だ。
一度会って、一緒に墓参りした事がある。
なぜ、気付かなかったのだろう…
まさか、こんな所で会うなんて思ってもみなかったから?
いや、真弥との結婚生活で大きな幸せを得た一方で、こういう観察眼や人への記憶力が大幅に鈍ってしまったからだ。
だから気付かなかったのだ。
美智香は後藤を見つめながら、そんなことを考えていた。
そのための店舗改装が入るため、美智香らパート従業員は、四日間の休みとなり、その後店の開店準備のための陳列、新しいレジやシステム変更に対する説明会などを店内で行った。
レギンドーの東日本本部からも社員が派遣され、美智香等もその指導を受けた。
「みなさん、おはようございます。
東日本本部から来た後藤と申します。
明日、いよいよレギンドー西公園店としてオープンするわけですが、システム等の変更など、細かい変更がある以外は、基本何も変わりません。
お客様に喜んでもらえる店舗を目指す
それさえ皆さんが認識していただいていれば、敢えてこちらから言う事はありません。
みんなで一丸になって頑張っていきましょう」
「はい」
美智香も皆にも混じって元気よく返事をした。
後藤は新店舗が出来ると数日間指導に来るスーパーバイザー的なポジションにいる人物らしく、新店ラッシュのレギンドーにあって、大変忙しくしているという話だった。
年齢は美智香より少し若い…四十歳くらいと見受けられた。
日本最大手のスーパーの社員らしく、身なりもきっちりしていて、トクヤマにいた男性社員達とは雰囲気からして違った。
元会社経営、そしてバリキャリの美智香から見ても、この男はなかなか仕事が出来るのでは?と一瞬思わせた。
ただ、特段この男がすごいという感じではなく、数々のやり手と遭遇してきた美智香としては、既視感があるというか、平均より少し上という判断をした。
あくまでもトクヤマ社員と比べて、という事で。
後藤は美智香も含めて、全ての従業員にレギンドーのシステムなどを丁寧に教えてくれて、わかりやすかった。
午後四時
一部のパートが上がる時間となり、美智香も皆に挨拶をしてバックヤードに下がった。
更衣室でさっと着替え、美智香は夕飯の支度をすべく、早足で店通口を出た。
すると、背後から
「佐々木さん」
と、いう声が聞こえてきた。
美智香が振り返ると、後ろから後藤も出てきた。
「あ、お疲れ様です。」
一パート従業員の名前を既に頭に入れているとは…
この男なかなかやる…
と、思いながら美智香は軽く会釈した。
そして、その場から去ろうと思ったが、後藤は引き留めるように言葉を発した。
「佐々木さん、あの
間違ってたらすいません、どこかでお会いした事ありませんか?」
予想だにしない方向からの言葉だった。
ナンパ?
いや、こんなパートのおばちゃんにわざわざ声をかけるほどの好きものでもなかろう
美智香は考えを巡らせたが思い浮かばず、しかし
後藤に感じた既視感は、どこかで会った事があるから?
と、いう疑問が湧いて来た。
「ひょっとして、トモ…
いや、吉岡智さんのお姉さんですか?」
「えっ」
一瞬にして美智香の後藤に対する既視感の答えが出た。
そうだ
この男は、智と付き合っていた後藤和俊だ。
一度会って、一緒に墓参りした事がある。
なぜ、気付かなかったのだろう…
まさか、こんな所で会うなんて思ってもみなかったから?
いや、真弥との結婚生活で大きな幸せを得た一方で、こういう観察眼や人への記憶力が大幅に鈍ってしまったからだ。
だから気付かなかったのだ。
美智香は後藤を見つめながら、そんなことを考えていた。
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