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助っ人
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「ママ
恵太、来るって。」
恵太から聞いた連絡先に電話をかけた莉愛は、話し終わるとすぐに、台所に立つ智の元へ駆け寄ってきて言った。
「えっ、本当に来るの?」
「うん。明日」
「明日!?」
「そう、明日
お母さんと二人で来るって。
私も明後日には寮に帰らなきゃなんないし、顔繋ぎ出来てよかったわ。」
「えーっ、こっちはまだ何の準備も出来てないのに。」
「細かい事は明日来てから話せばいいんじゃない?
それで一旦帰って、本当にここで暮らすかどうか向こうも話して決めんじゃないの?」
「それはそうだけど…」
二人が話していると、敦がやってきた。
「そうか、明日来るんだね
まあ、こんな虫のいい話はないかもしれないけど、上手く畑が回ってくれたら…」
「期待半分で待とうよ、パパ」
「ああ、そうだね。
莉愛も随分しっかりとした事を言うようになったもんだ。
パパ、感心しちゃったよ。」
「パパの教育のおかげじゃない?」
莉愛はニヤッと笑って言った。
智に似て顔が整っていて、頭も利発…
敦は、今更ながらに莉愛の成長ぶりに驚いた。
「トモちゃん」
「なあに、あなた」
「明日は母さんが入院する日だから、僕も付き添一日不在にしてしまうけど、よろしく頼むよ。」
「うん。こっちの事は心配しないで」
智は敦の手を握りしめて言った。
そのとき、奥から光江がおぼつかない足取りで、三人が話していた居間にやってきた。
「お義母さん、寝てなきゃダメですよ」
「私は大丈夫、元気よ」
光江は笑みを浮かべ、気丈に振る舞った。
そして、その場に腰を下ろすと、三人もまた光江を囲むように座った。
「トモちゃん、明日入院しちゃうから少しお話がしたくてね。
莉愛ちゃんとも」
「ええ。」
「トモちゃん、莉愛ちゃん
こんな山奥に来てくれて、うちの手伝いとかも頑張ってくれて、本当にありがとう。」
「お義母さん、そんな言い方をなさらないで下さい。
そんなの当たり前です。」
「この七年、私と敦が不甲斐なくて、ずっと苦労をかけっぱなしだった事を本当に申し訳なく思っています。」
「お義母さん…」
「でも、トモちゃんと莉愛ちゃんがこの家に来てくれて、毎日の生活を明るく、楽しく過ごすことが出来ました。
本当にありがとう。
多分、もうこっちには帰ってこられないと思うし、今のうちに二人にお礼を言っときたかったの。」
「…」
智は何と言葉をかけていいのかわからず、涙ぐみながら俯いた。
しかし、莉愛は
「何言ってるのよおばあちゃん
ちゃんと帰ってこないと、私
許さないわよ」
と、敢えて明るいトーンで言った。
「そうだね、莉愛ちゃん
おばあちゃんも、もう一度は諦めた命だし、どんな事でも耐えてみせるよ。
莉愛ちゃんにまた会うために治療を頑張ってくるからね」
「うん。次に私が帰ってくるのが冬休みのときだから、その時は元気になってお家で一緒にお正月を迎えようよ、おばあちゃん。」
「そうね。
お年玉用意して待っているからね」
光江はそう言って微笑んだ。
「母さん、明日早いし、そろそろ寝た方がいい。」
敦がそう声をかけると、光江は頷いて、壁に手をかけながらしんどそうに立ち上がった。
部屋に戻っていく光江の後ろ姿を見ながら、智は顔を手で押さえて肩を震わせた。
恵太、来るって。」
恵太から聞いた連絡先に電話をかけた莉愛は、話し終わるとすぐに、台所に立つ智の元へ駆け寄ってきて言った。
「えっ、本当に来るの?」
「うん。明日」
「明日!?」
「そう、明日
お母さんと二人で来るって。
私も明後日には寮に帰らなきゃなんないし、顔繋ぎ出来てよかったわ。」
「えーっ、こっちはまだ何の準備も出来てないのに。」
「細かい事は明日来てから話せばいいんじゃない?
それで一旦帰って、本当にここで暮らすかどうか向こうも話して決めんじゃないの?」
「それはそうだけど…」
二人が話していると、敦がやってきた。
「そうか、明日来るんだね
まあ、こんな虫のいい話はないかもしれないけど、上手く畑が回ってくれたら…」
「期待半分で待とうよ、パパ」
「ああ、そうだね。
莉愛も随分しっかりとした事を言うようになったもんだ。
パパ、感心しちゃったよ。」
「パパの教育のおかげじゃない?」
莉愛はニヤッと笑って言った。
智に似て顔が整っていて、頭も利発…
敦は、今更ながらに莉愛の成長ぶりに驚いた。
「トモちゃん」
「なあに、あなた」
「明日は母さんが入院する日だから、僕も付き添一日不在にしてしまうけど、よろしく頼むよ。」
「うん。こっちの事は心配しないで」
智は敦の手を握りしめて言った。
そのとき、奥から光江がおぼつかない足取りで、三人が話していた居間にやってきた。
「お義母さん、寝てなきゃダメですよ」
「私は大丈夫、元気よ」
光江は笑みを浮かべ、気丈に振る舞った。
そして、その場に腰を下ろすと、三人もまた光江を囲むように座った。
「トモちゃん、明日入院しちゃうから少しお話がしたくてね。
莉愛ちゃんとも」
「ええ。」
「トモちゃん、莉愛ちゃん
こんな山奥に来てくれて、うちの手伝いとかも頑張ってくれて、本当にありがとう。」
「お義母さん、そんな言い方をなさらないで下さい。
そんなの当たり前です。」
「この七年、私と敦が不甲斐なくて、ずっと苦労をかけっぱなしだった事を本当に申し訳なく思っています。」
「お義母さん…」
「でも、トモちゃんと莉愛ちゃんがこの家に来てくれて、毎日の生活を明るく、楽しく過ごすことが出来ました。
本当にありがとう。
多分、もうこっちには帰ってこられないと思うし、今のうちに二人にお礼を言っときたかったの。」
「…」
智は何と言葉をかけていいのかわからず、涙ぐみながら俯いた。
しかし、莉愛は
「何言ってるのよおばあちゃん
ちゃんと帰ってこないと、私
許さないわよ」
と、敢えて明るいトーンで言った。
「そうだね、莉愛ちゃん
おばあちゃんも、もう一度は諦めた命だし、どんな事でも耐えてみせるよ。
莉愛ちゃんにまた会うために治療を頑張ってくるからね」
「うん。次に私が帰ってくるのが冬休みのときだから、その時は元気になってお家で一緒にお正月を迎えようよ、おばあちゃん。」
「そうね。
お年玉用意して待っているからね」
光江はそう言って微笑んだ。
「母さん、明日早いし、そろそろ寝た方がいい。」
敦がそう声をかけると、光江は頷いて、壁に手をかけながらしんどそうに立ち上がった。
部屋に戻っていく光江の後ろ姿を見ながら、智は顔を手で押さえて肩を震わせた。
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