305 / 722
負の選択
しおりを挟む
「敦もトモも必死で頑張る姿を側で見てきたから、ワシも何とかしてやりたいと思うとる。
どうにかして畑を続けられるようにな」
「そりゃそうだ。
若い二人が村に戻ってきてくれて農家を継いでくれたんだ。
ワシら年寄りがサポートしてやらないかんだろ。」
吉川の言葉に三嶋も頷いて熱く語った。
「ありがとうございます。
畑を智に任せて人でも雇って来てもらおうかとも考えましたが、どう計算してもウチには人を雇うだけの余裕はありませんし、また、こんな山奥まで来てくれる人もいないでしょう。
だから、その線は諦めざるを得ませんでした。」
「それなら、光江さんが落ち着くまでの間、ワシが金を出してやるから、それで何とか急場を凌げないか?」
「いえ、これまでもおじさんや組合から多大なる援助をしてもらい、その額も膨らむ一方です。
これ以上はもう…」
「まあ、それもそうじゃな
収支バランスもかなり際どいところまで来とる。
今年から巻き返さんと、将来的には厳しいものがある。」
「と、いう事は吉川さん、ワシらで土地を買い上げるのが一番マシな策っちゅーことか」
吉川も三嶋も打開策を見つけられず、場に諦めムードが漂った。
「あのー、私も喋っていい?」
黙って聞いていた莉愛が手を挙げて、会話に入って来た。
「おう、莉愛ちゃんもこの話の当事者やし、全然話してくれて構わんよ」
三嶋はそう言って、莉愛の発言を促した。
「人を雇おうと思えば雇えると思うんだけど。
それもお金をかけずに」
莉愛の言葉に、そこにいた全員が訝しがって、視線を一斉に向けた。
「聞いた事ない?
学校に馴染めない子供たちを農家が里親として受け入れて農業させながら、育てるってやつ」
「あー、知っとるよ
それがどうかしたか」
「小中学生はまだしも、高校を不登校になったり、退学して家に引きこもってる人も多くて、その人たちに呼びかけて来てもらって手伝ってもらったらいいのよ。
最近は過保護な親もいて、一緒について来て住み込む人もいるそうよ。
ついでにその親にも働いてもらえば効率的だよ
家に住ませてご飯も食べさせないといけないけど、別に給料も払わなくていいし。
どうかな?」
「まあ、そんな都合のええ奴が来てくれたらええけど」
「私、心当たりが一人いるんだ。
どうかな、その案」
「心当たりって…」
莉愛の発言に智も困惑し、思わず顔を見つめた。
「今日はここまでにしよう。
もう一度皆んなで知恵絞って、何かええ方法がないか考えてみようや。
それでどうしようもなけりゃ、売ることを考えたらええ。
でも、それは最終手段としてな。
敦、光江さんの事は頼んだぞ」
「はい。ご迷惑をおかけしますが、どうか宜しくお願いします。」
敦は吉川に頭を下げた。
どうにかして畑を続けられるようにな」
「そりゃそうだ。
若い二人が村に戻ってきてくれて農家を継いでくれたんだ。
ワシら年寄りがサポートしてやらないかんだろ。」
吉川の言葉に三嶋も頷いて熱く語った。
「ありがとうございます。
畑を智に任せて人でも雇って来てもらおうかとも考えましたが、どう計算してもウチには人を雇うだけの余裕はありませんし、また、こんな山奥まで来てくれる人もいないでしょう。
だから、その線は諦めざるを得ませんでした。」
「それなら、光江さんが落ち着くまでの間、ワシが金を出してやるから、それで何とか急場を凌げないか?」
「いえ、これまでもおじさんや組合から多大なる援助をしてもらい、その額も膨らむ一方です。
これ以上はもう…」
「まあ、それもそうじゃな
収支バランスもかなり際どいところまで来とる。
今年から巻き返さんと、将来的には厳しいものがある。」
「と、いう事は吉川さん、ワシらで土地を買い上げるのが一番マシな策っちゅーことか」
吉川も三嶋も打開策を見つけられず、場に諦めムードが漂った。
「あのー、私も喋っていい?」
黙って聞いていた莉愛が手を挙げて、会話に入って来た。
「おう、莉愛ちゃんもこの話の当事者やし、全然話してくれて構わんよ」
三嶋はそう言って、莉愛の発言を促した。
「人を雇おうと思えば雇えると思うんだけど。
それもお金をかけずに」
莉愛の言葉に、そこにいた全員が訝しがって、視線を一斉に向けた。
「聞いた事ない?
学校に馴染めない子供たちを農家が里親として受け入れて農業させながら、育てるってやつ」
「あー、知っとるよ
それがどうかしたか」
「小中学生はまだしも、高校を不登校になったり、退学して家に引きこもってる人も多くて、その人たちに呼びかけて来てもらって手伝ってもらったらいいのよ。
最近は過保護な親もいて、一緒について来て住み込む人もいるそうよ。
ついでにその親にも働いてもらえば効率的だよ
家に住ませてご飯も食べさせないといけないけど、別に給料も払わなくていいし。
どうかな?」
「まあ、そんな都合のええ奴が来てくれたらええけど」
「私、心当たりが一人いるんだ。
どうかな、その案」
「心当たりって…」
莉愛の発言に智も困惑し、思わず顔を見つめた。
「今日はここまでにしよう。
もう一度皆んなで知恵絞って、何かええ方法がないか考えてみようや。
それでどうしようもなけりゃ、売ることを考えたらええ。
でも、それは最終手段としてな。
敦、光江さんの事は頼んだぞ」
「はい。ご迷惑をおかけしますが、どうか宜しくお願いします。」
敦は吉川に頭を下げた。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる