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聖職×性職

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「伊東先生、どうしてここに…」

智は驚くと共に、戸惑いの表現を見せた。


「いや、それは…」

エレベーターの前で立ち話を続けるわけにはいかず、とりあえず部屋に入ってもらったが、依然として智はパニックとなっており、何故伊藤が現れたのかがわからず、訳の分からない事を口走った。

「先生、申し訳ございません。

ワタシがこんなところで働いてるのを知って見に来られたんですね」

智は絶望感に苛まれながら、深く首を垂れた。



「待って下さい。
僕はそんな思い上がった人間じゃないです。」


「…」


「今日は客として来ただけです。」


「えっ」


伊東は顔を真っ赤にしながらも、言葉を続けた。


「吉岡さん、いえ、トモさん…
正直に言いますが、僕はあなたの事をずっと良いなって思っていました。

あなたがここで働いている事を最近知り、どうしようかと葛藤していましたが、自分の気持ちにウソはつけないと、予約を入れて来てしまった次第です。」


「そんな…」


「最初に莉愛ちゃんを連れて学校にいらっしゃったときに、あなたを一目見て惹かれるものがあり…」


「ちょっと待ってください。
ワタシは男ですし…」

「わかってます。
そんな事は…
わかっていますし、関係ない事だと思っています。」 

「…どうしましょう…」

伊藤が客として来てくれたのはよくわかったが、まだ戸惑いはあった。
娘の小学校の担任と、仕事とはいえセックスをする事に…
しかし、同時に、智はそんな伊東の想いに触れ、すごく嬉しかった。
智自身も伊東の事を爽やかで素敵な青年だと前々から意識はしており、先日の自宅への訪問で、その気持ちは決定的になった。

しかし、相手は娘の通う小学校の担任である。
何かをどうしようという考えはこれっぽっちもなく、言わば、一般の人間が好きな芸能人のアイドルを見るような目を向ける感覚に近かった。

なのに、そのアイドルが自分が働くファッションヘルスに客として来たのである。

驚きと戸惑いを見せない方がおかしい。

どうしようかと暫し考え込む智と、緊張感に包まれて視線が定まらない伊東との間に、表現のしようがない何とも言えない微妙な時間が流れていった。

だが、そこはプロのベテラン風俗嬢の智である。
すぐに気を取り直して言った。

「先生、せっかく高いお金を出して来ていただいたので、今日は一人のお客様として、精一杯お相手させていただきます。」

「あ、ありがとうございます。」

関係性をリセットした智のここからの切り替えは素早く、もう戸惑いを見せる事はなかった。
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