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「トモちゃんゴメン!」

智が現場に着くなり、新井が申し訳なさそうに頭を下げた。

「どうしたんですか?」

「カメラマンと予定してた男優が熱出しちゃって‥
今朝連絡があったんだよ。」

「そうなんですか。
じゃあ撮影はムリですねえ」

「ゴメンね」

新井はまた手を合わせて項垂れた。

「あの、トモさんですか?」

新井の後ろにいた、二十歳くらいの小柄な女性が、智に声をかけてきた。

「あ、そうです。」

「よかった!
一度お会いしたいと思ってたんです!」

智とはまた違った美しさをもつその女性は、嬉しそうな表情を浮かべた。

「えっと、ひょっとしてユウさん?」

智は見覚えのあるその顔をまじまじと見ながら質問した。

「そうです。えっ、ワタシの事知ってくれてたんですか??」

「知ってますよ。いつもYouTube見てます」

智も少し高揚しながら言った。

「トモちゃんには内緒にしてたんだけど、今回、ユウちゃんにも出演してもらえる事になっててね」

「えっ」

智はユウの方に視線を移し、驚きの表情を見せた。

「そうなんです。
トモさんの引退記念作品を撮影されるって、新井さんに聞いて、是非ワタシも出させて欲しいって。」

「えーっ、だってユウさんは超有名ユーチューバーじゃないですか!
AVに出るなんて」

「ワタシも実は昔に、一本だけ出演したことがありまして、新井さんのところのレーベルで。
今回、大ファンのトモさんとご一緒に出来るならって、新井さんにムリをお願いしたんです。」

「なんか、すごく光栄です。
嬉しいです。」

智は恐縮して顔を真っ赤にした。

「あ、そうだ。
もし、良かったら、なんですけど

トモさん、ワタシのYouTubeに出演していただけませんか。」

「えっ、ワタシが?」

「はい。会えたら是非お願いしようって思ってたんです。」

ここで、機材の片付けを手伝っていた新井が、手を止めて話に入ってきた。

「トモちゃん、是非出てあげなよ。
今日はもう撮影も中止で何も出来ないしね。


「是非是非、お願いします。
今日はスタッフもいるんで午後から撮影をしようと思えば出来ますので。」 

「AVの撮影が無くなったんで、この後は何も予定は無いんですけど、ワタシがYouTubeに出てもお役に立てるかどうか。
ユウさんのチャンネルって登録者数は何人いらっしゃるんですか?」

「えっと、25万人です。」

「えーっ!
ムリです、ワタシなんかが出たらきっと登録解除が続出します。」

「そんな事ないです。トモさんのファンの人ってすごく多くて、ワタシのチャンネルにもゲストで出て欲しいってコメントが多いんですよ、ホントに。」  

AV撮影中止→人気のユーチューバーのユウのチャンネルへの出演が、半ば強引に決定した。
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