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Uターン

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和俊の実家での濃密な二泊三日の旅を終え、二人は東京に戻ってきた。

和俊は職業柄、お盆や正月にまとまった休みを取る事は出来なかったが、今年は部署が変わった為、初めてお盆をゆっくり過ごすことができた。

それでも、翌日からは仕事に行く事になっており、一般のサラリーマンから比べると、やはり休み期間は短かった。

智はあと二日休みが残っていたが、人に会う約束をしていた。


約束の相手は新井だった。

「トモちゃん、どうしたの?」

智の方からは滅多に連絡する事がなかった為、新井は待ち合わせ場所のカフェに現れた智にすぐに質問した。

「新井さん、実はワタシ
結婚することになりまして‥

AVを引退させてもらおうと‥」

「えっ!そうなの!!

それは‥残念‥

いや、おめでとう!」

「勿論、契約があと一本残ってるのはわかってますので、それには出演させてもらいます。」

「えっ、大丈夫なの?」

「はい。新井さんには大変お世話になってますから。
それと、彼も理解してくれていますので。
ちょっと嫉妬深いところはありますけど。」

「そっか。じゃあ、お言葉に甘えて引退記念作品として大々的に打ち出しますかあ。」

「その辺の事はお任せします。」

新井はコーヒーを一口飲むと、あらたまった表情になった。

「トモちゃん。
僕もこの業界に長くいるから、トモちゃんみたいに、結婚するって言って引退した人を何人か見てきたんだけど

みんな、上手くいかなくて、またこの世界に舞い戻ってきたり‥

でも、トモちゃんなら、きっと幸せになれるって僕は信じてるよ。
だから、絶対幸せになってね。」

「ありがとうございます。」

「引退作品は激しいのを撮るから、覚悟しといてね。
あ、もしよかったら、彼氏も一緒に出演してもらう?」

「えっ、男優としてですか?

多分、ムリです。
すごく早漏で、だいたい一分くらいでイッちゃうので‥」

「あ、そうなんだ。
夜の方はちゃんと満足出来てるの?」

「はい。イクときの顔が可愛くて。
それに早いけどタフだから、一晩で何回も出来ますし。」

「まあ、こういうのは相性だからね。
ところで、結婚はいつするの?」

「結婚て言っても、ワタシ、性転換手術してないから戸籍の変更も出来ないし、とりあえずは一緒に住むだけなんですけどね。
将来的には手術して入籍したいと思っています。」

「今の日本の法律では性転換手術が必須になってるからねえ。」

「ワタシは、女性になりたいっていう願望は強かったですけど、性同一性障害ってわけじゃなくて、性自認は男性だったんです。

だから、おっぱいとかは欲しかったけど手術までは求めてなかったんです。

でも、好きな人が出来ると考えも変わってくるもんですね。」

「まあ、どっちにしても後戻り出来ない事だから、しっかりカウンセリングを受けて、慎重に考える事が大事だね。」

「はい。そうですね
ありがとうございます、新井さん。」

智は笑みを浮かべてぺこりと頭を下げた。
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