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門出

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「あっ、もうこんな時間か
そろそろお開きにするか。」

山村が腕時計を見ながら言うと、村瀬も頷いた。

「お前ら、いつまでこっちにいんの?」 

「二泊して、明後日東京に戻る予定。」

「悠花とも女同士仲良くなったんだし、盆とか正月以外もちょくちょく帰ってこいよ。

また遊ぼうぜ。」

「ありがとう。

でも、もう少ししたら、仕事の関係で
フランスに行っちゃうんだ。
勿論、トモも一緒に。」

「えーっ、フランス!

お前らスケールが違うな。
フランス語なんて一番難しいんじやねーの?
ゾッとするわ。」

山村がそう言うと、智は笑って

「c'était un plaisir de vous rencontrer」

と、言った。

「おいおい、吉岡ってフランス語喋れんのかよ」

「カズも喋れるよ、ね?」

智が向かい側に座る和俊に聞くと

「あっ、うん。

Je vous aime‥」

と、照れくさそうに言った。


「なんて言ったの?」

悠花が不思議そうに智に聞くと

「えっと、ワタシのは、皆さんに会えて嬉しかった‥みたいな感じ

カズは‥」

と、和俊に振ると

「えっと、あなたを愛してます。」

と、智を見つめながら言った。顔を真っ赤にしながら‥

「はいはい、じゃあ帰ろっか」

一気に場がしらけて、みんなが一斉に立ち上がった。

「あ、吉岡と後藤は今日の主役だし

お前らの分の支払いは黒田がするから」

山村が黒田の方を見ると

「ふざけんな!
こっちが払ってもらいたいくらいだ!」

と、終始ご機嫌ななめだったが、結局は黒田、山村、村瀬の三人が智達の分を支払ってくれた。


六人は、居酒屋の前でもう一度、再会を祝し、少し立ち話をしていたが

「ホント、また戻ってきたら絶対に連絡してこいよ。

俺ら四人と悠花と後藤も含めた六人は一生の仲間だと思ってるし。」

「えっ、俺も入れてくれるの?」

和俊が聞くと、山村は頷き

「ああ。今日からお前もしゃべくり6の仲間入りだ。」

と、真顔で答えた。


長時間にわたって行われた宴もようやく終わりを告げ、そこで解散となった。

智と和俊は、手を繋いで家への道をゆっくりとした歩調で歩いた。

「カズ、ごめんね
アイツら、いつもあーいうノリなのよ。」

「いや、俺めっちゃ楽しかったわ。

俺って友達があんまりいなかったからさ、こういう感じで集まるのとか、経験した事なかったし、なんか良かったわ。

トモのおかげだよ。」

「うん。カズにそう言ってもらえてワタシも嬉しい。」

「いやあ、今日は良い日だ」

「そうだね。ワタシもお父さんとお母さんにちゃんとご挨拶も出来たし、なんかホッとしちゃったよ。」

「さあ、帰って風呂入って寝よ。

なんか無性にしたくなってきたよ。」

「アホ。そんなのムリに決まってんじゃん。」

智は和俊の性欲に呆れ返り、ため息をついた。
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