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伴侶

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「どうだろう‥
俺と一緒にフランスに行ってくれないかな?」

「そんなの無理に決まってるじゃん。」

「こうなったから言うわけじゃないんだけど、俺と結婚してほしい。」

「なんちゅー雑なプロポーズするねん!」

「前からずっと考えてた事だよ。」

「‥」

「向こうに行ったら、いつ帰って来られるかわかんないし、トモと離れてしまうなんて、俺の選択肢にはない。」

「だからって、結婚なんてムリに決まってんじゃん。」

「なんで?」

「ワタシ、戸籍が男のままだし、結婚するなんて不可能だよ。」

「戸籍上は今はムリかもしれないけど、それはゆくゆく考えればいいんじゃないかな。」

「もし、そうだとして、たとえばフランスにワタシが一緒に行っても、勿論籍を入れられてないんだから、家族手当も出ないし、ワタシなんて、お荷物になるだけだよ。」

「トモ、それはよくわかってるんだけど、実は今回、この話をもらった時に、ある考えが浮かんだんだ。」

「?」

「トモ、お前、前に商社にいるとき、経産省のプロジェクトを手伝った事あるって言ってたよね、パリで。

せっかくのトモのスキルを活かさないこの状況がホントにもったいないって、ずっと思ってたんだ。
トモは俺より語学力も長けてるし、向こうで、またバリバリやってみればいいんじゃないかな。」

「そういう時代の事は、もう全部捨てたのよ。
ニューハーフとして生きるって決めた時から。」

「後悔はないの?」

「勿論、後悔が無いと言ったらウソになるけど、実際ニューハーフとして就職活動をしてみて、自分の予想以上に厳しいっていうのもわかったし‥
だから、もう昔のような仕事に就くのはムリだって、すっかり諦めたわ。」

「俺は諦めるべきじゃないと思うし、ひょっとしたら日本にいるより、向こうで勝負かけた方が上手くいくかもしれないんじゃないかな。」

「‥」

「トモ、正式に辞令が出たら、俺は一度実家に戻るつもりなんだ。
そのとき、お前を連れて一緒に帰る。
そこで、両親に紹介したいと思ってる。」

「どんどん進めないでよ、勝手に。」

「俺の気持ちは最初から変わってないよ。
少し時計の針が早く進んじゃっただけだよ。」

智は、いきなり答えを出さなければいけない状況となり、少しパニックになった。

「もう、そんなのわかんないよ、ワタシ、どうすればいいのよ!」

「トモは俺を信じて付いてきて欲しい。
ただそれだけ‥」

どこまでも、真っ直ぐな瞳で自分を見つめる和俊に、智は背中を押されるような錯覚に陥った。
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