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フェイクガール
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「でもね、カズ。
やっぱりワタシは女じゃなくてニューハーフなの。」
「そんなのわかってる‥」
「ううん、ワタシの話を聞いて。
どれだけ愛し合える仲になったとしても、ワタシが男だって事で、要らぬ苦労をカズにかけるのは目に見えてる。
ワタシの事を親やお友達に紹介出来る?
もし、紹介出来たとしても、それに理解をしてくれない人達は、ワタシは勿論、あなたの事を頭がおかしいヤツとか変態とか言って、軽蔑するだろうし、すごく嫌な気持ちになると思うの。
ワタシはそう言われるのに慣れてるから何てことないけど、それでも全く気にしないほどの精神力は持ち合わせてないから、そんな事言われるくらいなら、付き合うという選択肢は取らないってなるのよ。」
「俺は親にもちゃんと紹介出来るし‥
友達はいないから、そもそも紹介する相手がいないから大丈夫だ。」
「自虐ネタはやめなさい。」
智は水をさされて、少し笑った。
「でも、俺は本当にそう思うんだよ。
大切なのは本人達の気持ちが一番なんだって。
親や周囲の意見なんて全く関係ないって。」
「さっきも言ったけど、カズももう三十歳よ。
付き合ってたら、周囲は早く結婚しなさいって絶対に言ってくる。
そう言われたとしても、ワタシは戸籍が男のままだし、結婚は出来ない。
いえ、もし、戸籍の性別変更をして、法的に結婚出来るようになったとしても、子供はどう逆立ちしても作る事が出来ない。」
「それは、そうだけど、世の中にはそんな男女のカップルが沢山存在してるじゃん。
親に求められたからって、子供を絶対に作らなければならないってわけじゃないし、それこそ本人たちの意思が大切なんじゃないかな。」
「カズの言ってくれる事もよくわかるよ。
でも、ワタシが普通の女性だとして、カズと結婚して、子どもが出来なかったとする。
ワタシかカズのどちらに原因があるかわからないとして。
そしたら、多分カズのご両親は許してくれると思うの。だってそれは仕方ない事なんだから。
でも、ニューハーフのワタシとカズが一緒になったとしたら、きっと許してくれないわ。」
「そんな事ないって。きっとわかってくれるはず。」
「ニューハーフと一緒になっても子供が出来ないのは当然の事だけど、それはワタシがニューハーフだからであって、ご両親は納得なさらないわ。
だって、普通の女性とだったら、子供を作れる可能性は当たり前のように広がるんだから。
ニューハーフとの可能性はゼロ。
女性とだったら、決してゼロではない。
この差はとてつもなく大きい事なのよ。」
「うーん‥」
「好きという感情だけで突っ走る事はもう出来ない年齢なんだと思うよ。
ワタシもカズも。」
智がここのところずっと抱えていた思いを一気に吐き出したのだが‥
別に和俊に対して思っていた事ではなく、誰かに言う事によって、自分に言い聞かせたかっただけだったのだ。
「トモの気持ちっていうか、考えはよくわかったよ。
でもね、やっぱり、トモの話は一般論にすぎない事で、たとえば俺はそんな枠には当てはまらないよ。
ウチの親だって、少なくとも、俺はその性格、考え方を他の人達よりは理解してるつもりだ。
だから、ちゃんと話せばきっとわかってもらえるって、確信に近いものを持ってるんだ。」
「‥」
智は暫く何も言わず、和俊を見つめていたが、徐に身を乗り出し、その胸に抱きついた。
「カズ、好きっ」
と、言いながら‥
和俊も、その華奢な智の体をギュッと抱きしめて頷いた。
「ごめん、カズ‥
ワタシ、自分で強くなったって思ってたのに‥ダメなの。
やっぱり、傷つくのが怖くて‥」
智は泣き出した。
「トモ、俺の事を信じて‥
いや、信じてもらえなくてもいい。
俺は自分の気持ちに正直に生きるだけだから‥」
「ホントにごめんね‥
好きになればなるほど怖くなるの‥」
智は嗚咽しながら和俊の胸をその涙で濡らした。
やっぱりワタシは女じゃなくてニューハーフなの。」
「そんなのわかってる‥」
「ううん、ワタシの話を聞いて。
どれだけ愛し合える仲になったとしても、ワタシが男だって事で、要らぬ苦労をカズにかけるのは目に見えてる。
ワタシの事を親やお友達に紹介出来る?
もし、紹介出来たとしても、それに理解をしてくれない人達は、ワタシは勿論、あなたの事を頭がおかしいヤツとか変態とか言って、軽蔑するだろうし、すごく嫌な気持ちになると思うの。
ワタシはそう言われるのに慣れてるから何てことないけど、それでも全く気にしないほどの精神力は持ち合わせてないから、そんな事言われるくらいなら、付き合うという選択肢は取らないってなるのよ。」
「俺は親にもちゃんと紹介出来るし‥
友達はいないから、そもそも紹介する相手がいないから大丈夫だ。」
「自虐ネタはやめなさい。」
智は水をさされて、少し笑った。
「でも、俺は本当にそう思うんだよ。
大切なのは本人達の気持ちが一番なんだって。
親や周囲の意見なんて全く関係ないって。」
「さっきも言ったけど、カズももう三十歳よ。
付き合ってたら、周囲は早く結婚しなさいって絶対に言ってくる。
そう言われたとしても、ワタシは戸籍が男のままだし、結婚は出来ない。
いえ、もし、戸籍の性別変更をして、法的に結婚出来るようになったとしても、子供はどう逆立ちしても作る事が出来ない。」
「それは、そうだけど、世の中にはそんな男女のカップルが沢山存在してるじゃん。
親に求められたからって、子供を絶対に作らなければならないってわけじゃないし、それこそ本人たちの意思が大切なんじゃないかな。」
「カズの言ってくれる事もよくわかるよ。
でも、ワタシが普通の女性だとして、カズと結婚して、子どもが出来なかったとする。
ワタシかカズのどちらに原因があるかわからないとして。
そしたら、多分カズのご両親は許してくれると思うの。だってそれは仕方ない事なんだから。
でも、ニューハーフのワタシとカズが一緒になったとしたら、きっと許してくれないわ。」
「そんな事ないって。きっとわかってくれるはず。」
「ニューハーフと一緒になっても子供が出来ないのは当然の事だけど、それはワタシがニューハーフだからであって、ご両親は納得なさらないわ。
だって、普通の女性とだったら、子供を作れる可能性は当たり前のように広がるんだから。
ニューハーフとの可能性はゼロ。
女性とだったら、決してゼロではない。
この差はとてつもなく大きい事なのよ。」
「うーん‥」
「好きという感情だけで突っ走る事はもう出来ない年齢なんだと思うよ。
ワタシもカズも。」
智がここのところずっと抱えていた思いを一気に吐き出したのだが‥
別に和俊に対して思っていた事ではなく、誰かに言う事によって、自分に言い聞かせたかっただけだったのだ。
「トモの気持ちっていうか、考えはよくわかったよ。
でもね、やっぱり、トモの話は一般論にすぎない事で、たとえば俺はそんな枠には当てはまらないよ。
ウチの親だって、少なくとも、俺はその性格、考え方を他の人達よりは理解してるつもりだ。
だから、ちゃんと話せばきっとわかってもらえるって、確信に近いものを持ってるんだ。」
「‥」
智は暫く何も言わず、和俊を見つめていたが、徐に身を乗り出し、その胸に抱きついた。
「カズ、好きっ」
と、言いながら‥
和俊も、その華奢な智の体をギュッと抱きしめて頷いた。
「ごめん、カズ‥
ワタシ、自分で強くなったって思ってたのに‥ダメなの。
やっぱり、傷つくのが怖くて‥」
智は泣き出した。
「トモ、俺の事を信じて‥
いや、信じてもらえなくてもいい。
俺は自分の気持ちに正直に生きるだけだから‥」
「ホントにごめんね‥
好きになればなるほど怖くなるの‥」
智は嗚咽しながら和俊の胸をその涙で濡らした。
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