カジュアルセックスチェンジ

嫉妬

「あれ？今日はトモちゃん、休み？」

外村は食堂に入って来るなり、水を運んできたパートの中窪多惠子に向かって言った。

「残念ね、今日は休みよ」

「なーんだ、それはショック。
会えるの楽しみにして、飯抜きで長距離を戻って来たのになあ。」

「外村さんも、ああいうデブの女がタイプなんだね」

「うわっキツイなあ。
まあ、デブって言っても、あのコ、顔が美人じゃん。
痩せたらめっちゃ変わると思うけどなあ。

まあ、そこまで太ってるとは思わないし、今のままでも全然アリだけどなあ。」

「そうかねえ。で、注文は？」

「えっと、鯖の味噌煮定食、ご飯大で。」

「はーい」

多惠子は伝票に書き込み、渡し口の方に消えた。

智と同じ時間帯に入っているパートは全部で四人おり、智以外は四十から五十代の女性達だ。

虐めるとまではいかないが、入店早々に、若いというだけの理由で、客からチヤホヤされる智に、誰もが良い感情を持っていなかった。

智がニューハーフだという事実を聞かされていたら、また違う反応になったかもしれないが‥


また一人、客が入ってきた。

「いらっしゃい」

多惠子が声をかけると、客の男は、座る席を探そうとせず、厨房の方に視線を向けた。

「竹井さん、吉岡さんは今日休みよ。」

多惠子が言うと、竹井はビクッとして

「あ、いや、俺はそんな‥」

と、言いながら、空いてる席に腰掛けた。

「竹さん、今日はもう終わり？」

外村が後ろを振り返って聞くと

「うん。終わった」

と、竹井は短く答えた。

竹井正樹　四十歳で独身。

この食堂の近くにある運送会社に勤務している。

風貌は、良く言えばワイルド、悪く言えばゴリラのようで、身長は180と高身長でガッチリしているが、全身が毛深く、あんまりモテそうには見えない。

彼も智に好意を抱いており、智が店に来てから、足を運ぶ回数が飛躍的に増えていた。