カジュアルセックスチェンジ

寵児

アダルトビデオの撮影にやってきた智は、朝から忙しくしていた。

今回は変なシチュエーションが設定されており、智は男装、つまりスーツ姿で男として働いている。
だが、本当は体には胸があり女性化しており、周囲に隠しながら働いていたが、同僚の男性社員にその秘密がバレて、脅されて犯されまくるという内容だ。

まあ、ニューハーフ物のAVではありがちな設定であるが、実際に大企業にいたという智の経歴は、一つの売り文句になっているので、リアリティがあってウケるという判断されての事だった。

「いやあ、さすがトモちゃんだね。
人気があるのも頷けるわ。本気で感じてイクし、今回の企画の都合上、スーツ着てるときはメイク無しなのに、ほぼすっぴんでも男だった面影すら残ってないんだもん。
美しすぎるって。」

「そんなことないです。
薄目にはしていますが、メイクはちゃんとわからないようにやっていますから。」

セットの変更が行われている間、智はお茶を手にしながら、監督の的場の言葉に対し、恥ずかしそうに答えた。

「トモちゃん、この後は男優五人との絡みで、中出し、顔射、逆アナと、なんでもアリのやつだから。」

「はーい。頑張ります。」

智は頷き、ガウンを脱いだ。

段取りを確認し、ベッドでスタンバイしながら、智は自分の性癖について考えていた。

男時代は淡白。今は完全に淫乱。
なんでそのような事になるのか‥

やはり、自分の今の姿が本来のもので、男時代は何もかもが偽りであった。それ故に、男性として女性とする行為に興味が出なかったのだ。

奈々の父、俊之にも指摘されたが、こんな事で一家の主人として人生を全うできるのだろうか。

奈々との約束でもあるし、娘はなんとしても守っていかなければならない。

このAVの撮影についても、家族三人の未来のためではないのか。

智は自分に言い聞かせ、次の撮影に臨んだ。

その思いとは裏腹に、智は男優達の責めに本気で感じ、顔やお腹を精液まみれにされながら、体を痙攣させた。

こうして智のAV復帰第一作の撮影は無事に進行し、編集作業の後、大々的に宣伝され、発売となった。

ニューハーフAVは、まさにニッチな世界のもので、関心がある者の数も圧倒的に少ないが、それだけに、コアなファンが付いていてるのも間違いない。

そんな彼らは、本気か演技かを見極める目もしっかりと持っている。

その点からも智の存在は稀有であり、ファンを熱狂させるものがあった。

言うまでもなく、この作品はニューハーフ物としては、異例の大ヒットをしてシリーズ化。

風俗の仕事も含めて、智の人気は最高潮に達し、風俗誌やスポーツ新聞からも取材依頼が増えていった。

ネットやyoutubeでも智の姿を勝手に貼ったりアップロードする人間も出だし、智の美しすぎるニューハーフとしての地位は確固たるものとなった。

この事は、智の収入を支える面で大きなプラスとなったが、その反面、後に禍をもたらす事になろうとは、智自身、この時点では、想像すらしていなかった。