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契約
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「一人で私に会うとは、あなたはやはり肝がすわってる。
ニューハーフにしておくのはもったいないね。」
桐山は不適な笑みを浮かべながら智に視線を送った。
「桐山さん。さっきお話しした通り、奈々はもうあなたと関係を続けて行く気はありません。
どうか、私達をそっとしておいてくれませんか。」
智は深々と頭を下げた。
「吉岡さん、あなたT大出なんだってね。
それも主席ときたもんだ。
そして、誰もが知る大企業に就職するも、僅か三年で退職し、性転換
女性として生きる為に清掃会社に就職。
どう考えても割に合わない人生を送ってますね。」
「よく調べてますね。その通りです。」
「実は、私もT大出なんですよ。あなたほど優秀ではなかったが。
まあ、学歴のおかげで何不自由なく暮らせています。
ただ、女性運があまりなくてね。
そんな中、スポーツジムで偶然知り合ったのが奈々だったんですよ。
いや、偶然なんかじゃない。運命、必然の出会いです。あんないい女はなかなかいませんから、そう簡単に諦めるわけにはいかんのですよ。」
「随分勝手な言い方をなさいますね。
あなたが暴力など振るわず、そして異常な束縛さえしなければ、奈々は私を頼ってなんか来なかった筈です。
全てはあなた自身の行いによりこのような結果を招いたんですよ。」
「ハッキリ言いますね。そういう性格嫌いじゃないですよ。」
「穏便に済ませたいと思ってますが、あなたが諦めないなら警察に言います。」
「どうぞ。ご自由に。
私はあなた方に何の危害も加えてませんし、損害も与えていません。
警察は私をどんな罪で捕まえるんですか?
民事不介入は警察の基本です。」
「何かが起きてでは遅いので、最近は警察も積極的に動いてくれますよ。」
智と桐山は決して交わることのない意見をぶつけ合った。
ところが、桐山は自分の太腿をパンと叩くと、智を見つめて言った。
「わかりました。あなたの強い気持ちが私にも痛いほど伝わりました。」
「では諦めてくれるのですか?」
「諦めますよ、吉岡さん。」
あっさりと意見を変える桐山に、智は不信感しかなかったが、諦めてもらえるならそれに越したことはないと、念押しをした。
「では、今後一切奈々には近づかないで下さい。いいですね?」
「いや、待って下さい。それじゃあ私の立場がない。それに私は寂しがり屋でしてね。このまま一人でいるのは耐え難い。」
「は?」
「じゃあ、こうしませんか。
奈々に近づかない代わりに、あなたが私を慰めてくれるというのはどうですか。」
「仰ってる意味がわかりません。」
「吉岡さん、この前あなたとお会いして、さらに今日また見てみて、私はあなたの美貌に惚れました。奈々も美人ですが、あなたはもっと美しい。」
「私は男ですよ。あなたを慰めたりなんか出来ません。早くフツーの女性の恋人を見つけるのが先決だと思います。」
「私は面食いでね、美しい顔が大好きなんですよ。あなたを見てたら、女か男かなんて大した問題じゃないということがわかりました。」
「‥」
「これは交換条件です。
別に一緒に住もうとか言ってるわけじゃなくて、私と定期的に会って下さい。そうしてくれたら、奈々にはもう近づきませんよ。
あなたが拒むなら、これからも必死に奈々を連れ戻す努力をするだけです。」
それだけ言うと、桐山は立ち上がり、智の分のコーヒー代も合わせて支払いを済ませて店を出ていった。
智は暫くその場から動けなかった。
そして、桐山の言葉を額面通りに受け取る事ができず、その真意がどこにあるのか思いを巡らせた。
ニューハーフにしておくのはもったいないね。」
桐山は不適な笑みを浮かべながら智に視線を送った。
「桐山さん。さっきお話しした通り、奈々はもうあなたと関係を続けて行く気はありません。
どうか、私達をそっとしておいてくれませんか。」
智は深々と頭を下げた。
「吉岡さん、あなたT大出なんだってね。
それも主席ときたもんだ。
そして、誰もが知る大企業に就職するも、僅か三年で退職し、性転換
女性として生きる為に清掃会社に就職。
どう考えても割に合わない人生を送ってますね。」
「よく調べてますね。その通りです。」
「実は、私もT大出なんですよ。あなたほど優秀ではなかったが。
まあ、学歴のおかげで何不自由なく暮らせています。
ただ、女性運があまりなくてね。
そんな中、スポーツジムで偶然知り合ったのが奈々だったんですよ。
いや、偶然なんかじゃない。運命、必然の出会いです。あんないい女はなかなかいませんから、そう簡単に諦めるわけにはいかんのですよ。」
「随分勝手な言い方をなさいますね。
あなたが暴力など振るわず、そして異常な束縛さえしなければ、奈々は私を頼ってなんか来なかった筈です。
全てはあなた自身の行いによりこのような結果を招いたんですよ。」
「ハッキリ言いますね。そういう性格嫌いじゃないですよ。」
「穏便に済ませたいと思ってますが、あなたが諦めないなら警察に言います。」
「どうぞ。ご自由に。
私はあなた方に何の危害も加えてませんし、損害も与えていません。
警察は私をどんな罪で捕まえるんですか?
民事不介入は警察の基本です。」
「何かが起きてでは遅いので、最近は警察も積極的に動いてくれますよ。」
智と桐山は決して交わることのない意見をぶつけ合った。
ところが、桐山は自分の太腿をパンと叩くと、智を見つめて言った。
「わかりました。あなたの強い気持ちが私にも痛いほど伝わりました。」
「では諦めてくれるのですか?」
「諦めますよ、吉岡さん。」
あっさりと意見を変える桐山に、智は不信感しかなかったが、諦めてもらえるならそれに越したことはないと、念押しをした。
「では、今後一切奈々には近づかないで下さい。いいですね?」
「いや、待って下さい。それじゃあ私の立場がない。それに私は寂しがり屋でしてね。このまま一人でいるのは耐え難い。」
「は?」
「じゃあ、こうしませんか。
奈々に近づかない代わりに、あなたが私を慰めてくれるというのはどうですか。」
「仰ってる意味がわかりません。」
「吉岡さん、この前あなたとお会いして、さらに今日また見てみて、私はあなたの美貌に惚れました。奈々も美人ですが、あなたはもっと美しい。」
「私は男ですよ。あなたを慰めたりなんか出来ません。早くフツーの女性の恋人を見つけるのが先決だと思います。」
「私は面食いでね、美しい顔が大好きなんですよ。あなたを見てたら、女か男かなんて大した問題じゃないということがわかりました。」
「‥」
「これは交換条件です。
別に一緒に住もうとか言ってるわけじゃなくて、私と定期的に会って下さい。そうしてくれたら、奈々にはもう近づきませんよ。
あなたが拒むなら、これからも必死に奈々を連れ戻す努力をするだけです。」
それだけ言うと、桐山は立ち上がり、智の分のコーヒー代も合わせて支払いを済ませて店を出ていった。
智は暫くその場から動けなかった。
そして、桐山の言葉を額面通りに受け取る事ができず、その真意がどこにあるのか思いを巡らせた。
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