カジュアルセックスチェンジ

フロイライン

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その日の仕事帰り、智は遂に女性ホルモンの投与を受けることになった。
病院へはケイコがわざわざ付いてきてくれた。

「トモちゃん、何度も言うけど

ホルモン注射をしたら、もう後戻りできなくなるわよ。

あれは、魔法の薬なんて生易しいもんじゃない。


正常な男性機能を阻害することによって女性化させる行為なの。

一度乱された内分泌は自力で元に戻すことは出来ない。

そうなったら男に戻るのは無理だし、一生女性ホルモンの投与を続けないと若くして更年期障害になったり、骨粗鬆症になったりして寿命を縮めることになるわ。

相当な覚悟をしていないと後悔するだけよ。」

ケイコはこの期に及んでもまだ、智に思いとどまらせようと説得を続けた。

「色々心配かけてすみません。
でも、絶対に後悔はしませんので、大丈夫です。

それよりもわざわざ付いてきてもらってすみません。」

「ううん
ワタシも注射打つ日だったしね」

智もこの女性ホルモン剤がどれだけ危険かということは、事前に調べてよくわかっていた。

しかし、自分の本来の姿に戻るために避けて通れないということもまた強く思っていた。

これは自分の魂を救済する措置であると。

雑居ビルの4階にある美容外科の看板を掲げたその病院は、そんなに大きくはなかったが清潔な感じがした。
病院の性質上、待合室が細かく分けられ、他の患者の視線を受ける事なく自分の順番を待つ事が出来るので、智は緊張せずに済んだ。

ケイコよりも先に智の名前が先に呼ばれ、診察室に入ることとなった。

さすがに少し緊張してきた智は、診察室の椅子に座りパソコンを打つ医師らしい中年の男を見て
ぎこちなく頭を下げた。

向かい側の椅子に座るように促されて、腰掛けると
眼鏡をかけて少し禿げ気味の医師が徐に話を始めた。

「女性ホルモンの注射をご希望ということですが

ご存知のように、ここは正式な段取りを飛ばして行っています。

本当なら、然るべきカウンセリングを受け、検査もして、それがクリア出来たらようやくホルモン投与を行うんですが、その辺は承知されてますか?」


「もちろんです。
その辺りのことは十分に承知しています。」


「わかりました。

それでは簡単に説明をします。

女性ホルモン剤には卵胞ホルモンと黄体ホルモンの大きく分けて2種類あり、主に前者を使っています。

黄体ホルモンの方が胸が大きくなりやすいとも言われてますが、色々と副作用があって
例えば、乳頭が黒ずんだりとかが挙げられます。

それと、女性ホルモン剤自体の作用は時間をかけて緩やかに効く性質ですので、一度に沢山打っても効果が出るわけでもなく、逆に体に負担になるだけです。

2週間に一度のペースで打たれるのが良いかと思います。

量は1アンプルか2アンプル、筋肉注射なので
お尻に打ちます。」


「わかりました。

2アンプルでお願いします。」



「今申し上げましたように、注射を打ってもすぐに効果は出ません。

それと個人差があって、胸が大きくなる人もいれば全然変わらない人もいます。

副作用で頭痛や体の火照り、情緒の乱れなどがありますが、全く症状が出ない人も中にはおられます。」

一通りの説明を受けた後、診察台にお尻を出した状態でうつ伏せに寝かされた智に、医師は自ら2本の注射を素早く打った。
筋肉注射だけに、多少の痛みはあったが、あっという間に終わってしまった。

意気込んできた割には、あっけないものだなと感じながら診察室を出た。

待合室に戻ると先に終わったケイコが待っており
笑みを浮かべて智を出迎えた。

ケイコは女装、智は男性モードでスーツ姿
ただのカップルにしか見えない2人は、支払いを済ませて病院を出た。

「どう、感想は?」

歩きながらケイコが聞くと、智は頷いて

「すごく満足してます。」

と笑って答えた。



それから2週間ごとに2本の注射を欠かさずに打つことになった智だったが、もちろん最初はなんの変化もなかった。

それでも一カ月が経過した頃、突然変化が起きた。

朝起きると乳首付近にヒリヒリするような痛みを感じた。

よく見ると少しだけ突起してるような感じで、常に乳首が勃っているような状態になっていた。

シャツを着ても乳首が目立つ感じで、恥ずかしさを覚えた。


それでも初めての目に見える変化に智は高揚感に包まれたのだった。

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