ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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闇堕ち編

怨讐

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亮輔の病室を出た薫は、最後に店の元同僚で、ラーメン屋を手伝ってくれていたユウの家を訪ねていった。


ユウもまた、愛する人が死んでしまい、あの日以来失意の中で過ごさざるを得なかった。

また、死んだユウの恋人は、薫のヤクザ時代の弟分、赤石功太であり…


「ユウちゃん…
どう?体調は…」


「薫さん…

おかげさまで、少しずつですけど、ご飯も食べられるようになってきました。」



「痩せたね…」



「そうですね…
痩せました

ずっと泣いて暮らしてたんで。」



「そうだね…
ワタシも似たような感じだったから。

でも、ご飯が喉を通るようになってよかったわ。」



「薫さんて…強いですね。」



「えっ?ワタシが強い?」



「少なくともワタシにはそう見えます。

何かあったんですか?」



「未来ちゃんがね、もうすぐ垂水組の八代目になるの。」



「えっ?

復讐のために…ですか?」



「それは、わかんないわ。


ただ、このままやられっぱなしで幕引きをしたくないっていう思いからだと思う。

ワタシも、ヤクザの世界に身を置いていた者の責任ていうのかな…

彼女の行動を見て、目が覚めた気がしたの。」



「じゃあ、薫さんもヤクザの世界に?」



薫は静かに頷いた。


「こんな体では何の役にも立てないと思うけど…

若い未来ちゃんだけにこの大役を任せるのはあまりにも酷なことだと思ってね。

年長者の務めとして、少しでも彼女の役に立てればいいと思っているの。」


「でも、未来は何をしようとしてるんですか?」



「ワタシも詳しくは知らないけど、多分彼女が八代目に就いた瞬間から、マスコミ関係が面白おかしく報道すると思うの。

そこで、逃げ隠れするんじゃなくて、敢えてマスコミやその他の媒体に積極的に露出して、世論誘導をするって言ってたわ。」



「世論誘導?」



「今の時代、こちらが完全な被害者であっても、世間にとったらヤクザ同士の抗争にしか見えないし、批判の矛先はこっちに向いてくる。

だって、犯人の背後関係がわかってない状況だからね。」



「なるほど…」



「未来ちゃんは、若い女性である自分が積極的に露出することによって、批判の矛先を変えたい…

いえ、緩和したいと思っているのかもしれない。」



「じゃあ、薫さんも?」


「ワタシが手伝うのはそこじゃない。


マスコミや世間の目を懐柔した後、多分…
未来ちゃんは次の行動に出ると思う。」



「次の行動…?」


「ええ。

この事件の犯人をあぶり出し、そこでカタをつけるっていう…

そのとき、ワタシも微力ながら彼女をバックアップ出来たらって思ってるの。」



「…」



既に薫の顔は、ユウが知っている柔和な美人ではなかった。

その表情は、昔、冷たい目の美青年といわれていた時代を彷彿とさせるもので、ユウの背筋を凍らせた。

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