316 / 352
懐柔編
非力学
しおりを挟む
実戦形式の組み手稽古をする薫と未来は、激しく打ち合いを行った。
「押忍!」
組み手を終え、一礼すると未来は驚きの表情で薫に言った。
「薫さん、スゴイです。
蹴りも突きもめちゃくちゃ強いです!」
「ううん。
まだ未来ちゃんほど力強く打てないし、全然よ。」
「何言ってるんですか
薫さんの正拳突き、マジでヤバいですよ
ホントに。」
二人でそんな話をしていると、一人で稽古をしていた亮輔が話に入ってきた。
「二人共すごいわねえ
ワタシなんていくら頑張っても全然よ。」
亮輔は首を竦めて悲しげな顔をした。
「沙織さんは仕方ないですよ。
性転換薬使ってるんだから。
筋力がすごく落ちるんでしょ?」
薫がタオルで顔を拭きながら聞くと、亮輔は頷いた。
「そうね。
ホントに自分でもビックリするくらい力が無くなっちゃったよ。」
「完全なる女性になれるっていうメリットもありますけどね。」
「そこはね。
でも、今抗争中じゃない?
大西から一旦男に戻れって言われちゃったわ。」
「えっ、男に戻るんですか?」
「戻るんなら女のままでこんなところに稽古にこないわよ。
男になんて戻りたくないから、なんとか女の体のままで鍛えようとしてるの。」
「沙織さんてワタシや薫さんみたいなニューハーフじゃなくて、フツーの男の人だったのに、そんな風に思うようになるんですね。」
未来は亮輔の話に少し驚きながら言った。
「たしかに、多村に無理矢理去勢させられてニューハーフにされた時はそんな考えはなかったけど、徐々に心境の変化があったっていうか…
決定的だったのは、やっぱりこの性転換薬で女になったことね。
あのイケイケヤクザの多村だって今も女のままでいるところを見ると、やっぱりそういうことなんだろうなって思う。」
「そうですね…」
薫も未来も神妙な顔で頷いた。
「ところで、未来ちゃん
垂水の七代目とは上手くやれてるの?」
「はい、おかげさまで。」
「それは何よりね。
薫さん、多喜も変わりない?」
「ええ。
ワタシの後輩だったニューハーフの子が店でバイトしてくれてて、彼もワタシもすごく助かっています。」
「多喜はヤクザだった事が信じられないくらいマジメな男だから、たまにカチンとくる時もあると思うけど、見捨てないでやってね。」
「はい。でも、見捨てるなんてとんでもないです。
彼のことを心から愛していますし、ワタシが捨てられないようにもっと尽くしていきたいって思ってます。」
薫は少し恥ずかしがりながらも、堂々とした口調で惚気た。
三者三様に幸せいっぱいだった。
このときまでは…
「押忍!」
組み手を終え、一礼すると未来は驚きの表情で薫に言った。
「薫さん、スゴイです。
蹴りも突きもめちゃくちゃ強いです!」
「ううん。
まだ未来ちゃんほど力強く打てないし、全然よ。」
「何言ってるんですか
薫さんの正拳突き、マジでヤバいですよ
ホントに。」
二人でそんな話をしていると、一人で稽古をしていた亮輔が話に入ってきた。
「二人共すごいわねえ
ワタシなんていくら頑張っても全然よ。」
亮輔は首を竦めて悲しげな顔をした。
「沙織さんは仕方ないですよ。
性転換薬使ってるんだから。
筋力がすごく落ちるんでしょ?」
薫がタオルで顔を拭きながら聞くと、亮輔は頷いた。
「そうね。
ホントに自分でもビックリするくらい力が無くなっちゃったよ。」
「完全なる女性になれるっていうメリットもありますけどね。」
「そこはね。
でも、今抗争中じゃない?
大西から一旦男に戻れって言われちゃったわ。」
「えっ、男に戻るんですか?」
「戻るんなら女のままでこんなところに稽古にこないわよ。
男になんて戻りたくないから、なんとか女の体のままで鍛えようとしてるの。」
「沙織さんてワタシや薫さんみたいなニューハーフじゃなくて、フツーの男の人だったのに、そんな風に思うようになるんですね。」
未来は亮輔の話に少し驚きながら言った。
「たしかに、多村に無理矢理去勢させられてニューハーフにされた時はそんな考えはなかったけど、徐々に心境の変化があったっていうか…
決定的だったのは、やっぱりこの性転換薬で女になったことね。
あのイケイケヤクザの多村だって今も女のままでいるところを見ると、やっぱりそういうことなんだろうなって思う。」
「そうですね…」
薫も未来も神妙な顔で頷いた。
「ところで、未来ちゃん
垂水の七代目とは上手くやれてるの?」
「はい、おかげさまで。」
「それは何よりね。
薫さん、多喜も変わりない?」
「ええ。
ワタシの後輩だったニューハーフの子が店でバイトしてくれてて、彼もワタシもすごく助かっています。」
「多喜はヤクザだった事が信じられないくらいマジメな男だから、たまにカチンとくる時もあると思うけど、見捨てないでやってね。」
「はい。でも、見捨てるなんてとんでもないです。
彼のことを心から愛していますし、ワタシが捨てられないようにもっと尽くしていきたいって思ってます。」
薫は少し恥ずかしがりながらも、堂々とした口調で惚気た。
三者三様に幸せいっぱいだった。
このときまでは…
4
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
NH大戦争
フロイライン
ファンタジー
呪詛を家業として代々暮らしてきた二階堂家。
その二十六代目にあたる高校二年生の零は、二階堂家始まって以来の落ちこぼれで、呪詛も出来なければ、代々身についているとされる霊能力すら皆無だった
そんな中、彼の周りで次々と事件が起きるのだが…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる