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懐柔編

戦時下

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大友組、および朴一派の動きが活発化している事と、垂水組から除名された神頭会の暴走など、抗争が激化する兆しが見え隠れしていた。
そんな中、大西と亮輔の間で、ある問題について話し合いの場がもたれていた。


「沙織

俺からの提案、考えてくれたか?」


「一時的に男に戻るって話?

えーっ、ヤダよ」


「なんでイヤなんだよ。
多村は間違いなく、女となり弱くなってしまったお前を第一に狙ってくる。

それを防ぐためには、やはり男に戻るしかねえ。
この一連の抗争が終わるまでは。」


大西は至極真っ当な話をした。
しかし、亮輔は頑なに拒否した。

「今さら男に戻るなんてイヤなの。
ワタシ、女の体でいたいのよ。

一時的にでも男に戻るなんてまっぴらごめんよ。」


すっかり脳まで完全に女性化され、また女の体の素晴らしさを十分に体験してしまった亮輔にとって、男に戻る事などあり得ないことだった。


「何もずっと男でいろ、なんて言ってねえじゃねえかよ。

この抗争が終結するまでの辛抱だ。

垂水組の庇護を受け、圧倒的な力を持つ我々と、警察を敵に回し、ゲリラ戦しか出来ない大友組とでは、大人と子供以上の戦力差がある。
全ては時間が解決してくれるよ。」


「でも、あなた…
ワタシだって例の空手道場で護身術程度は学んでるのよ。
この体のままでも多分大丈夫。」


「いやいや、とても強くなったようには見えねえけど。

多喜の嫁さんや岡田さんの婚約者並みにやれねえと、しんどいぞ。」


「ちょっと待って

薫さんや未来ちゃんの強さはバケモノレベルよ。
そりゃ、ワタシみたいに性転換薬を使っていないから、筋力の著しい低下っていうのはないけど、それでも去勢して女性ホルモン打ちまくってる体では、昔のように動けないのがフツーの事だと思うのね。

でも、あの二人はそんなハンデをものともせず、恐ろしい強さを誇っているわ。
特に十年以上女として生きてる薫さんは、最初は苦労したみたいだけど、既に昔のカンを取り戻してるし。」


「だったら尚更…」


「ワタシが男に戻ったとして、あなたはそれでも抱いてくれる?」


「えっ…」


「ゲイでもないあなたにはムリだよね?

ワタシは体が男に戻っても、脳は女のままだから、あなたに抱いて欲しいって思っちゃうわ。

でもあなたは抱いてくれない…
こんなに寂しいことはないわ。」


「沙織…
少しの間、そう…
ほんの少しの我慢でいいんだ
ワガママ言わないで、俺の頼みを聞いてくれよ。」


大西と亮輔の話し合いは、どちらも折れず、結論が出なかった。
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